訪日外国人旅行者の急増などに伴い、地域の生活環境が悪化する「観光公害」と呼ばれる現象について、観光庁が初の実態調査に乗り出した。各地で交通混雑や民泊をめぐって発生しているトラブルなどへの対策を強化する。詳しい状況と有効な対策事例を把握し、平穏な住民生活との共存に向け、今年度中に報告をまとめる。
すでに有名観光地がある全国約50自治体にアンケートを実施、今月内に新たに約150自治体への調査を始める。自治体担当者や有識者を交えた勉強会を11月にも発足させ、実態調査の結果を踏まえて国や自治体への政策提言を行う。目標とする観光立国に向け、「住んでよし、訪れてよしの地域づくり」(観光庁)を進める狙いだ。
京都や鎌倉などでは観光シーズンに電車や路線バスが混雑し、住民の通勤通学に支障が出ているほか、マンションの空き部屋などを有料で提供する民泊物件でも、利用者の騒音やごみ放置などのトラブルが相次いでいる。自治体への調査では、こうした現状や課題を明らかにする方針。
今年1~8月の訪日客は前年同期比12・6%増の2131万人で、通年では初めて3千万人に達する見通しとなっている。