肥満はさまざまな痛みを作り出し、さらに増悪させる。たとえば、ある疫学調査によれば、BMIが30以上の人は、BMI25未満のグループとの比較で「腰痛」の発症率が2倍になるという。若年者では、腰の椎間板が自身の重みに耐えかねてパンクし、椎間板ヘルニアを発症する。加齢変化が加われば変形性脊椎症、神経症状を伴う場合には脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、との具合にである。
股関節や膝関節の痛みもしかりである。これらの関節は“荷重関節”とも呼ばれ、常に体重という大きな荷重に耐えているのである。「変形性膝関節症」での膝の痛みは、体重に耐えかねてすり減った軟骨が悲鳴をあげているのだ、と考えていただきたい。
人工膝関節置換術の適応となる人の実に70%以上が肥満の患者さん、さらに肥満がある場合には、この人工膝関節の耐用年数も低下する。なお、これらの関節の痛みは移動機能が低下した状態(“ロコモティブシンドローム”)の原因となり、さらなる肥満を引き起こす。
周囲に“メタボ君”呼ばわりされて憤慨しているあなた、まずは痩せましょう。ただ腰や股関節、膝関節に痛みを自覚されている方が、ダイエットのためと歩き回るのはいけません。カロリー制限以外に手立てはありませんので、悪しからず。(近畿大学医学部麻酔科教授 森本昌宏)