開港から159年、日本のビール産業発祥の地ともいわれる横浜で唯一、地ビールを製造しているのが横浜ビールだ。コンセプトは「横浜のビールを地元の食材と共に地元の人へ」。地産地消による地域活性化である。その同社が今夏から「食の循環」への取り組みを始めた。
ビール醸造工程で出るモルト粕や、直営レストラン「驛の食卓」などで排出される生ゴミを回収。廃棄物処理の「横浜環境保全」の協力で堆肥にし、堆肥を山梨県道志村の農家に無償で渡し、野菜生産に使ってもらう。採れた野菜は全て横浜ビールが買い取り、直営レストランなどで料理し、客に提供する、というわけだ。
「一番大切にしているのは人のつながり」と太田久士社長はいう。多くの地元生産者たちと手を取り合って横浜ならではのビールを造り、道志村もそのひとつだった。清らかな川が流れる同村は横浜市の水源地であり、横浜ビールにはその水を使った商品『道志の湧水仕込』もある。
ただ、緑に囲まれ豊かな自然に恵まれる一方、人口1700人余りと深刻な過疎化に悩まされていることを村に足を運んでいるうちに太田社長は知る。そこで「雇用の創出に繋がれば」と、野菜生産を村の人々に提案したのである。
課題は物流コストと収穫量だ。当初配送は業者に委託していたが、コストが高く、現在は毎週社員が車を運転し、野菜を取りに村へ足を運んでいる。
また、種類が豊富な夏の野菜に比べ、冬は根菜が中心になるため、年間通して安定した収穫量を維持することも必要だ。
10月5日、道志村から道志小学校の5年生11人を直営レストランに招き、道志村産の野菜を使ったメニューを振る舞った。カボチャのスープ、ポテトフライ、玉ねぎが入ったハンバーグ。ほおばる子供たちからは笑顔がこぼれた。自分の家で作られている玉ねぎが使われていると知った女の子は「びっくりした。おいしかった」と少し照れくさそうに話した。太田社長が「自分の村に誇りを持ってほしい。大きくなったら、この野菜をみんなが運んでね」というと、笑い声が響いた。
横浜市民に水源地・道志村をより身近に感じてもらい、村では雇用を促進して活性化を図る。太田社長は「大げさかもしれないが、取り組みを通して村を、街を、国を元気にしたい」と目を輝かせている。
【サスティナブル】
1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。
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やたべ・ゆか 山口県出身。元エステティシャン。FM佐賀、静岡放送、南海放送に勤務。現在は首都圏でフリーアナウンサーとしてスポーツ中継やニュースを担当。
【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。