【IT風土記】愛知発 IT支える最先端技術がキャビアを産む 低温プラズマでチョウザメ養殖 (2/3ページ)

低温プラズマを含む水で養殖されているチョウザメの幼魚

低温プラズマを含む水で養殖されているチョウザメの幼魚

 プラズマは分子をつくる原子核と電子が自由に飛び回っている状態(電離状態)で、固体、液体、気体とは異なる「第4の状態」と呼ばれている。「稲妻や太陽もプラズマです。溶接の時に出る光もそうです。宇宙の99.9%はプラズマでできています。人類も他の生き物もプラズマから生まれたといっても過言ではないのです」と堀教授。常温から数百度程度の低い温度で生成できるのが低温プラズマだという。もともとは真空状態でしか生成できなかったが、研究開発が進み、いまでは常温常圧の中でも低温プラズマを生成できるようになった。

 低温プラズマの可能性は無限大

 低温プラズマは、ナノレベルの微細な加工に優れており、シリコンウエハー上に精密な電気回路を刻み込む半導体製造に活用されてきた。真空状態にしなくても安定したプラズマを生成する技術が確立されたことで半導体の製造コスト削減にも貢献。低温プラズマ技術の進歩は半導体製造の技術向上と密接に関係しており、低温プラズマはIT(情報通信技術)やAI(人工知能)を支える技術でもある。

 さらに半導体製造以外の分野にも応用が広がり、医療の分野での研究が進んでいる。研究の最前線に立つ堀教授は農業や水産業へ応用研究にも取り組み、農産物や魚の成長を促進させる効果を確認した。なぜ生物の成長を促進する効果があるのか、その原理は解明されていないが、堀教授はプラズマによって活性化された分子や原子が細胞レベルで何らかの作用を与えているとみている。「低温プラズマに無限大の可能性があります」と自信満々に語る。

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