豊根村での実証実験について堀教授は、「研究室での飼育とは違い、養殖の現場ではさまざまな問題や課題が発生します。現場で発生するさまざまな状況変化の中でどう作用するのか。研究室での研究と現場とをリアルタイムでつなぎながら成果を出していきたい」と意気込んでいる。
新たな付加価値を模索
現在、熊谷さんは約4000匹のチョウザメを養殖。その養殖作業の傍ら、都会からこの村に来た地域おこし協力隊の2人の若者とともに実験施設のチョウザメの世話も行っている。「今回の研究によって、どこにも負けない最高品質のチョウザメが育てられることを期待している」と熊谷さん。地域振興課の青山課長は「すでにキャビアの生産に成功している地域もあり、われわれは後発組。最先端の技術を積極的に取り入れて、先発組に負けないブランド価値をつくりだしていく」と力を込めた。
静岡、長野両県の県境に接する豊根村は村の総面積の93%が森林に囲まれ、過疎化と高齢化は村の大きな悩みの種だ。
豊根村の伊藤実村長は「国や県もそうだが、役所の場合、1回やって終わりという事業も少なくない。しかし、民間企業は3年、5年と研究を粘り強く続けて、成功にこぎつけている。そういった手法が行政にも必要なんです」とこの取り組みの意義を訴えている。
一人の村民のチャレンジから始まった村の活性化策はどんな展開をみせるのだろうか。