【サスティナブルにっぽん~山梨県】歴史が磨いたダイヤモンド加工技術で華開く真珠 鈴木春花

華真珠のネックレスを着用した筆者・鈴木春花
華真珠のネックレスを着用した筆者・鈴木春花【拡大】

  • 華真珠のネックレス
  • 米国のカットコンテストで1位を獲得した作品
  • 10年かけて華真珠を生んだ小松ダイヤモンド工業所先代社長の小松一男氏(小松ダイヤモンド工業所提供)
  • 華真珠のカットができる唯一の技術者で、小松ダイヤモンド工業所社長の小松一仁氏

 宝飾品出荷額が全国の3割を占め、堂々1位の山梨県。宝石の街といわれる甲府市で、世界から注目されている逸品がある。ツルリと丸い真珠に特殊なカットを施し、独特の輝きを見せる「華真珠」である。

 華真珠は、甲府市内で1967年にダイヤモンド研磨加工の町工場として創業された小松ダイヤモンド工業所の先代社長、小松一男氏の発案だった。「世界初の宝石」を日本産が圧倒的なシェアを誇る真珠で、と10年の歳月をかけて取り組み、生み出したものだ。

 真珠は貝の中で層を作り大きくなる。とてもデリケートな素材で、削りすぎると美しい部分が失われてしまう。0・3~2・5ミリの厚さしかない真珠の表面に、大きなものでは600もの面を削り、手作業で1面ずつ磨き上げていく。こうした気の遠くなるような工程を経て、真珠は内側から輝くような華やかさを帯びる。

 現社長の一仁氏が一男氏の技術を受け継ぎ、さらに発展させた。華真珠の面を付けられるのは一仁氏だけであり、大量生産できない。一仁氏は米国の宝石カットコンテスト「Gemmys(ジェミーズ)2009」のカット部門で日本人として初めて1位を獲得、技術力の高さを証明した。その後、「ものづくり日本大賞」の内閣総理大臣賞を受賞。世界中から約4千社が出展する世界三大展示会の一つ「セプテンバー香港ジュエリー&ジェムフェア」には2000年から毎年出展しており、今では欧州やアジアに多くの熱心な華真珠ファンがいる。

 宝石県・山梨の原点は、江戸時代後期にさかのぼる。水晶の産地として飾り技術が発展し、やがて、水晶だけでなく宝石研磨の加工やジュエリーの流通を請け負う企業が増え、ジュエリーの出荷量も増加していった。

 華真珠は、そんな歴史が育んだ伝統と高度な技術、「掘り尽くしたらおしまい」という多くの宝石とは異なる持続可能な宝飾資源・真珠が結びついて生まれた輝かしい成果なのである。

【サスティナブルとは】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

            ◇

 すずき・はるか 元テレビ山梨アナウンサー、現在もテレビ山梨の情報番組でMCを務めるほか、テレビやラジオ、ニュース出演、司会、エッセイ執筆、日本茶アンバサダーとして活動中。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。