【サスティナブルにっぽん~千葉県】歴史息づく土地で競走馬の“第二の人生”支える 沢野有希 

調教競技用走路での騎乗トレーニング。表情は真剣そのもの
調教競技用走路での騎乗トレーニング。表情は真剣そのもの【拡大】

  • かつての牧を思わせるナリタファーム
  • ナリタファームの前身、吉田牧場の厩舎は、昭和40年代から今も現役
  • ナリタファームで4月に誕生した千葉県産サラブレッド、0歳馬のイガノノニ。来秋から馴致(じゅんち)が始まる
  • 沢野有希

 千葉・下総。日本中央競馬会(JRA)の東日本における調教拠点、茨城・美浦トレーニングセンターが近いこともあり、ここには複数の競走馬牧場がある。現在は競走馬の生産というより、育成と休養がメインだ。

 2009年に開業した成田市にある競走馬育成・休養牧場のナリタファーム(http://naritafarm.co.jp/)は、全寮制「インターアクションホースマンスクール」(http://interaction-school.com/)を併設している。同スクールの生徒30人が、馬主から預ったG1や重賞レース等で活躍する現役競走馬10~15頭の世話をする。

 その一方で、生徒用の馬30頭の大半は競走馬を引退したサラブレッドだ。最近は競走馬引退後のセカンドキャリアを過ごす場所としての牧場の役割も大きくなっているのである。同スクールのように騎手や馬の世界での就職を目指す若手の訓練用として、あるいは乗馬クラブの乗馬用として、働く馬も多い。

 私が訪れた日の午後は、騎乗訓練。鞍や腹帯をつけ、1周350メートルの調教騎乗用走路でトレーニングを行っていた。引退したばかりの競走馬が生徒を振り落とすハプニングもあり、みな真剣な表情で取り組んでいた。卒業生にはJRAデビュー2年目の川又賢治騎手がいる。また、JRA厩務員、全国の牧場に勤める人たちが生まれるなど人材を送り出している。

 下総地方の馬とのかかわりは深く、長い。かつては野生の馬を放し飼いしていた広大な牧(まき)があった。諸説あるが、戦国時代に北条氏が千葉氏に命じて経営させていたのが近代的経営のはじまりといわれ、江戸時代の寛政年間には、佐倉牧で3千頭余、小金牧で5千頭余、あわせて8千頭余の野馬がいたとの記述もある。

 明治政府の殖産興業の一環として、内務卿だった大久保利通らの主導で、この地に設置された日本初の牧羊場は、明治中期に佐倉牧の一角にあった取香(とっこう)牧の取香種畜場と統合。宮内省が管轄する下総種畜場、のちの下総御料牧場となる。御料牧場は、日本競馬界の名馬を輩出する名門牧場だったが、成田空港建設地に選定され、1969年に閉場する。

 時代の荒波に翻弄されながらも、なお、牧場エリアとして生きている下総。ここでの馬とのふれあいは、脈々と続く歴史を体感することでもある。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

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 さわの・ゆき 日本道路交通情報センターを経てbayfm情報アナウンサー。トレイルランニング&大会MCは10年以上。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。