【サスティナブルにっぽん~茨城県】門前町の元気の素は多彩ないなり寿司 有働文子

年間350万人が訪れる笠間稲荷神社
年間350万人が訪れる笠間稲荷神社【拡大】

  • 「二ツ木」の元祖くるみいなり(中が見えるように許可を得て開けてもらったもの)
  • イベントで集まった「笠間いなり寿司いな吉会」メンバー(笠間いなり寿司いな吉会提供)
  • 有働文子

 年間350万人が訪れる茨城県笠間市の笠間稲荷神社。創建は飛鳥時代の651年と伝えられ、ご祭神の宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)は生命の根源を司る神で、農業、工業、商業、水産業など、あらゆる殖産興業の守護神として、古くから崇敬されてきた。

 そして、その参拝客に親しまれてきたのがいなり寿司である。いなり寿司というと、酢飯を甘く煮た油揚げで包んだものを思い浮かべるが、笠間稲荷神社の門前通りでは、多彩な具材のいなり寿司が味わえる。

 笠間市では、2006年からいなり寿司を街おこしのツールと位置づけ、地元の旅館組合や飲食店関係者が中心となり、「笠間いなり寿司いな吉会」を結成した。茨城大学人文社会科学部の小原規宏ゼミナールとの連携で、笠間いなり寿司コンテストや笠間いなり寿司親子教室、初午稲荷寿司まつりなどの開催やマップ作り、インスタグラム展開などを行っている。県内で初めて、「まちおこしの祭典!B-1グランプリ」を主管する全国組織「ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会(通称・愛Bリーグ)」にも加入した。

 そのかいあってか、いな吉会会長の菅井敏幸さんは「わざわざ笠間に、いなり寿司を買いに来る人も増えている。滞留時間が伸びて、街全体が元気になれば」と話している。いな吉会結成前は、いなり寿司を出すのは数店だったそうだが、現在は門前通りを中心に、市内12店。今回、神社近くの3店に話を聞いた。

 4代目店主が切り盛りする「二ツ木」は1900年創業という老舗。会ができる前の89年からくるみの入った「くるみいなり」を提供している。元々はスタンダードないなり寿司を作っていたが、先代が笠間稲荷神社の別名「胡桃下稲荷」にちなんで創作したもので、今は他の店でも見られるくるみいなりのルーツといえる。家族経営で大量生産はできないため、テイクアウト専門だ。

 東日本大震災後、米屋をたたみ、昭和レトロなカフェ形態に変えた「鍋屋」はしょうが、くるみ、からみそのいなりをセットで売っている。具材の「しょうが」は「神社=ジンジャー」にかけた。笠間産コシヒカリが具材を引き立てている。

 そば屋「柏屋」は、いな吉会結成後、地元の常陸秋そばを使った「蕎麦いなり」の発売を始めた。そばは水切り後に少し時間を置き、しっとりさせ酸味を出した。菜の花とくるみが入ったいなり寿司もあり、そばと一緒に注文する客も多い。

 取材中も門前通り商店街には、いなり寿司を購入する旅行客の姿が目立った。夕方になると、売り切れの店が増えて観光客がいなり寿司を探し歩く姿がみられるそうだ。「笠間=いなり寿司」が認知されつつある、と肌で感じた取材だった。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

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 うどう・ふみこ 元茨城放送レポーター。茨城県内の人・モノ・行事を2年間で、約800カ所取材。現在はフリーアナウンサーとして県内外で幅広く活動中。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。