外国人受け入れ拡大、人手不足解消へ 労働市場に転機、準備加速

アパート建設現場で作業するベトナム人技能実習生=東京都大田区
アパート建設現場で作業するベトナム人技能実習生=東京都大田区【拡大】

 深刻な人手不足に直面する日本経済は今年、大きな転機を迎える。昨年成立した改正出入国管理法に基づく新制度で、単純労働分野を含めた外国人労働者の受け入れ拡大が進められる。政府は4月から5年間で最大34万5150人を受け入れる方針で、各業界は新たな在留資格の取得に必要な技能試験などの受け入れ準備を加速させる。ただ、受け入れ人数が多い業界でも試験問題の作成や実施実務を担う団体さえ決まっていないところもある。4月の制度開始に向け「時間が足りない」(建設業界関係者)との声も上がっている。

 農業分野では、5年間で最大3万6500人の受け入れを見込む。農林水産省によると、すでに技能実習を終え、特定技能1号に試験なしで移行できる元実習生が昨年度までに計約6万8000人おり「この元実習生の受け入れを想定している」。

 新資格試験は、水稲や畑作といった耕種と畜産の2部門に分ける。現場ですぐ農作業に取りかかれるよう、農薬、肥料の使い方や、適切な水やりや収穫の時期を問うような試験を想定している。試験は2019年内に開始し、国外で年2~6回程度実施する見込み。国内でも実施する。試験の実施者は公募で選ぶ。

 最大4万人を受け入れる建設業界は今後、求人や新在留資格試験の実施などのための新組織を共同で設立する。大手ゼネコンの業界団体などが参加する予定。業界関係者は、適切な労働環境の確保や悪質ブローカー排除に向け「組織を一本化することで環境の改善につなげたい」と期待する。

 ビルクリーニングでは最大3万7000人を受け入れる。試験を担当する全国ビルメンテナンス協会は国家試験の「ビルクリーニング技能検定」や外国人技能実習制度向けの試験を基に、新たな試験作りを急いでいる。技能実習生向けでは学科と実技の両方を課す場合と実技だけの場合がある。新試験がどちらになるかは未定だという。

 最大で5万3000人の受け入れを見込む外食産業。日本人向け検定試験がなく、外国人技能実習生も受け入れていない。技能試験を一から作るしかなく、業界団体の日本フードサービス協会の担当者は「どのくらいの技術を求めるのか設定が難しい」とこぼす。

 開始時期は今年4月を想定しており、1月半ばには試験案を固めて外国人を対象に試行試験を実施したい考えだ。実技試験は場所の確保などが難しく筆記試験だけになる見通しだ。