【サスティナブルにっぽん~兵庫県】日本伝統の「お供え文化」が世界へ 小田恵子

全国で唯一「伊勢神宮御料酒」に選定されている「白鷹」(白鷹株式会社提供)
全国で唯一「伊勢神宮御料酒」に選定されている「白鷹」(白鷹株式会社提供)【拡大】

  • 昭和天皇伊勢神宮参拝の際献上された酒壺(同型品、白鷹集古館所蔵)
  • 伊勢神宮御料酒一升瓶、白鷹集古館所蔵)
  • 小田恵子

 初詣した神社で御神酒(おみき)をいただいた方も多いだろう。御神酒は日本古来の祭式で神前に供えられる神饌(しんせん)のひとつ。神の霊力が宿り、味が変わると言われている。澄み渡る空気の神社の社頭で、清らかにのどを通る御神酒の味は格別だ。

 日本最高峰の神社、伊勢神宮の外宮では、毎日「日別朝夕大御饌祭」(ひごとあさゆうおおみけさい)が執り行われている。約千五百年もの間、1日も欠かさず朝夕行われている天照大御神のお食事の儀式で、国の安泰を祈願する。このお供えに使われている酒は、兵庫・灘の清酒「白鷹」だ。1924年に採用が決まり、全国に千五百あるといわれる酒蔵の中で唯一、伊勢神宮に御料酒を納め続けている。内宮の授与所で参拝客が求める御神酒も白鷹である。

 日本では神前や仏前に多くのお供え物をする。いずれもお供えのあとお下がりをいただくことで、ご利益が得られると信じられている。お供えへの思いはさまざまだが、例えば毎年11月に行われる新嘗祭では、その年の新穀を神に感謝してお供えし、お下がりをいただきながらともに収穫を祝う。その他の祭式後も同様に、神様と同じ食事をする。これは世界的にみても特異な風習であり、日本ならではの「お供え文化」と言える。

 白鷹は、六甲山系の伏流水「宮水(みやみず)」と兵庫県産の酒米「山田錦」を使い、「きもと造り」という伝統的な製法で造られる。自然の変化に左右されやすい水や米の質を高く保つことは容易ではなく、酒は自然の大いなる恵みの結晶ともいえる。日本の酒は自然への畏敬の念とともにいただくべきものかもしれない。

 日本酒が、チーズやフォアグラなどにも合うと食中酒として注目され、2015年のミラノ万博、2016年の伊勢志摩サミットの後、ブームが加速している。全国の酒蔵がこぞって海外の展示会に出展する中、地道に伊勢神宮への献酒を続けてきた白鷹も、今春ヨーロッパへ渡る。ミラノ、パリではすでに日本食レストランのシェフやソムリエに紹介され、好評を得ている。現地の日本酒通には「宮水」「山田錦」「きもと造り」という専門用語もよく知られており、日本人以上に日本酒を愛する人々も増えている。

 今年の新嘗祭は、即位の礼後初めて行われる大嘗祭。その年に白鷹が羽ばたく。日本伝統の「お供え文化」が世界に伝わり、国を超えた人間の使命である「自然との共存」を促すきっかけになれば素晴らしい。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

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 おだ・けいこ 兵庫県出身。山陽放送でアナウンサー兼ディレクターを務め上京、2004年に「局アナnet」を設立。観光動画制作など地方創生のための様々な活動を行っている。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。