【サスティナブルにっぽん~長崎県】福と笑を運ぶカラフルな深堀えびす 中村直美

亀ケ崎浜えびす(長崎野母崎半島パワースポット発信塾塾提供)
亀ケ崎浜えびす(長崎野母崎半島パワースポット発信塾塾提供)【拡大】

  • 永江浜えびす(長崎野母崎半島パワースポット発信塾提供)
  • 祠に入った古屋敷波止えびす(長崎市提供)
  • えびす様の鬼瓦(長崎野母半島パワースポット発信塾提供)
  • 中村直美

 七福神の一つで商売繁盛や豊漁・豊作をもたらす恵比須様。長崎市深堀町には、思わず顔がほころぶ、愉快でカラフルな恵比須像が家の軒先や街角などあちらこちらにある。

 赤や青、黄、白などのペンキで鮮やかに彩色を施され、同じものは二つとない。1年経ったら色も表情も変わるものさえあり、町の人々に愛され、道行く人を和ませている。

 この深堀えびす、いったいいくつあるのか。5年ほど前から深堀町の恵比寿像を一元管理しようと、台帳作りをはじめた深堀地区まちづくり推進協議会の「恵比須でまちづくり部会」によると、確認されているだけで、80体を超えるそうだ。

 深堀町に恵比須像が多く祀られている理由については、諸説あるが、この地が恵比寿信仰の盛んな佐賀鍋島藩の飛地だったからというのが有力だ。実際、鍋島氏の居城がある佐賀市には、2015年度調査で恵比須像が828体あり、日本一多い、という。

 深堀えびすは、港の波止崎にある「波止えびす」、海岸近くの「浜えびす」、各家庭の幸せを願って祀られる「屋敷えびす」の3つに分類される。

 色が塗られるようになったのは、明治時代。深堀えびすは砂岩でできており、風化しやすく、多くは祠がない。そこで、漁師たちが船を塗って余ったペンキを使い、風化を防ごうとしたのが始まりという。

 今も各家庭から屋敷えびすを持ち寄って塗り直しをする地域があり、作業する人の裁量で色や表情が変わったり、ヒゲやホクロが新たに加わったりと、自由で遊び心にあふれている。

 通りにある「浜えびす」と「波止えびす」は「町えびす」ともいわれ、地域ごとで管理し、散策しながら見ることができる。一方、「屋敷えびす」は個人所有で、多くは民家の裏庭にある。町おこしへの賛同から通りから見える場所に移したる家もあるが、見物には留意が必要だ。

 長崎市で唯一の城下町だった深堀町は、高度成長期の埋め立てなどで多くの石塀などが失われたものの、カギ型街路や武家屋敷通りなどの町並みが残っている。こうした歴史的景観を活かすため、住民が1996年に協議会を設立した。2011年に、市の景観形成重点地区に指定され、昨年は国土交通省「都市景観大賞」の景観まちづくり活動・教育部門優秀賞を受賞した。マップや手ぬぐいの製作、えびす巡りなどを実施。深堀えびすを採り上げたカルタや街並みのカレンダーもある。

 ただ、近年は、人口減少や引っ越しで空き家が目立つようになり、協議会では、放置されるなど祀れなくなった恵比須像の引き取りを行っている。歴史的景観維持費を各家庭などから集めた町会費で賄っているため、恵比須様になじみの薄い新住民の協力を得るためにも、深堀の歴史に興味を持ってもらう必要がある。

 もっとも、そんな難題も恵比須様のユーモラスで豊かな表情をみると、きっと解決できるはずと思えてくる。そんな前向きな気持ちになるのも、恵比須様のご利益に違いない。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

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 なかむら・なおみ 長崎文化放送、NHK長崎を経て、現在、FM NACK5でニュースアナウンサー、各種司会として活動中。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。