自立して最初の3カ月間は、それまで実家で経験してきたことを思い出しながら、生活の基本を作ればよい、と辰巳さんは冒頭で助言している。
料理の手順からトイレの掃除の仕方まで、ひとつひとつだ。そうすると何かが欠けていると気づいたとき、自分で考えるようになる。これが自立のはじまりだ。
1年ほど経てひとりの生活を振り返る際は、以下のようなことに気づいて欲しいと語る。
“願わくば「生活というあたりまえのことの大切な意味」を感じられるようになってくれていると嬉しいです”
“「自立して生きる」「家事をする」ことが、あなたに生き延びていく力を与えてくれると私は信じています”
無人島でサバイバルするには火をおこせないといけない。だが、多くの人はそういう類の生き延びる力ではなく、病気のときに他人に助けを適切に頼める、怪我したときに工夫して家事をこなせるという力が必要になる。あるいは、例えば、服の洗濯やアイロンをかけることで他人から清潔だとみなされ、信頼されるための配慮をするのが大切なのだ。
さて、ここで思い出話を少々しよう。
ぼくは辰巳さんと10数年前から時々お会いしていた。何を生活の規範とするのかについてよく話し合った。携帯電話にカメラ機能がついたころ葬式の様子を写真におさめる人がではじめ、その行為をどう判断すべきなのか、とか。
辰巳さんは『日本人の新作法: シンプルで、失礼のないおつきあい』という本を2005年に出版した。たしかこの本が出る前に前述のような話をしていた記憶がある。