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1500万円の入居金も返還されず 終身契約の施設から80代で出されたワケ (2/4ページ)

「うちで看ることはできません」

 彼女が入居した老人ホームは、24時間対応をうたっていた。日中は看護師、夜間は介護士が常駐している。しかし、24時間の完全な見守りは難しい。

 退院した翌朝、彼女は再び転倒してしまった。巡回をしていたヘルパーが、トイレの前で倒れている本人を発見した。結局、骨折の疑いで救急搬送され、再入院となった。検査により、今度は別の部位に骨折が見つかった。

 手術の適応ではなかったため、保存療法を受けることになった。装具で患部を固定し、可能な範囲でリハビリを行った。ベッド上で安静を保たなければならなかったが、彼女はその必要性を認識できていなかった。痛みは知覚できるが、認知機能の低下により、骨折していることが分からず、自分の身を守れない。前回の入院と同様、安全確保のための拘束をする対応となった。

 保存療法の経過から、完治して老人ホームに戻ることは難しかった。有料老人ホームの経営者と管理者は、「拘束が必要な認知症患者は看ることができない。一応、倫理委員会で検討するが、難しいだろう」と話した。

 多額の入居金を支払って、この待遇だ。ひとりで働いて貯蓄し、老後の頼りと入居した場所から、このような形で追い出されるとは、彼女は想像もしなかっただろう。最期まで過ごすという契約であったが、違約金は発生しなかった。入居金を含め、何も返金されていない。

「事実上身寄りなし」で施設探しも困難に

 有料老人ホームの経営者にとっては、ビジネスモデル上、死亡を含めて早期に退去させるほど儲かる。月額の費用が同じならば、入居者が入れ替わる度に発生する入居金を、多く発生させた方がよいというわけだ。

 病院側は、本人の居場所を一から探した。不幸中の幸い、リハビリ病院への転院が可能な状況だった。転院して3カ月はしのげる。急性期の病院ができることはここまでだ。

 この事例のように、唯一の身寄りが遠方の90代の姉といった「事実上身寄りなし」の場合、リハビリ病院に転院した後、その先に入院できる病院や入所できる施設が見つかりにくい。老人保健施設を転々とすることもある。骨折からの回復がうまく行かなければ、死ぬまで拘束や鎮静をするような病院の空きを待つしかない。

 身寄りがなければ、こうしたときに誰も守ってはくれないのだろうか。貯金があるからお金で解決できると、安心しきるのは考えものだ。有料老人ホームへの入居にあたっては、そこで人生の最期までを過ごすという終身契約であっても、具体的な契約内容を確認しておかなければならない。

 看取りまでと言っても、どの程度のケアや医療対応を行ってくれるのか。経管栄養や人工透析、がんの終末期ケアなどは、対応できないとしている施設も少なくない。冒頭のケースの彼女は入居当時、認知症を発症していなかったが、入居後に認知症を発症した場合の対応についても事前に確認しておくべきだったのだろう。

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