自動でふたが開閉し、温水洗浄の温度や強さが選べ、脱臭も…。日本ではそう珍しくなくなった高機能トイレだが、世界に目を向けると、“トイレ革命”途上の国々もある。世界で屋外での排泄(はいせつ)を強いられる人は9億人とされ、トイレは感染症のほか、性暴力の温床にもなっている。そんな国々のトイレ環境改善を日本の技術やノウハウが支えている。(大渡美咲)
◆インドで貢献
「遠くのトイレに行くために女性が襲われたり、学校にトイレがなく生理のとき通えなくなったり。安全なトイレがないことは、さまざまな悪影響を及ぼす」
住宅設備大手「LIXIL(リクシル)」の担当者はインドのトイレの実情をこう説明する。
インドでは人口13億人のうち、約5億人がトイレのない家に暮らしているという。2014年には用を足すために家の外に出た10代の少女2人が性的暴行を受け、殺害される事件が発生した。
事件を受けインドでは野外排泄をなくすキャンペーンを開始。これに貢献しているのが、リクシルが開発した清潔で安価な簡易式トイレシステム「SATO(サトー)」。用を足した後に少量の水を流すだけで蓋が開閉する仕組みで、においや病原菌を媒介する虫などをシャットアウトできる。
リクシルでは販売するほかに、2年前から「みんなにトイレをプロジェクト」を実施。日本で同社のシャワートイレ1台を購入すると、アジアやアフリカなどの国々にSATO1台が寄付される。昨年3月末までに180万台が出荷された。「日本国内でもトイレ環境が悪い国があるということが認知されれば、さらに活動が広がる。2020年までに1億人の衛生環境を向上させるために取り組みたい」とリクシルの担当者は話す。
◆平昌五輪前に
インド以外の国でもトイレ環境の改善は進む。
昨年開催された韓国・平昌オリンピックの直前、現地のトイレが変わった。それまでは使用した紙が流せず、ゴミ箱に捨てていたが、「公衆トイレなどに関する法律」が施行され、流せるようになった。