こうした状況を受け、最高裁は1月24日付の通知で、全国の家裁に報酬について議論するための「たたき台」として資料を提示。この中で最高裁は「後見業務に応じた報酬にする」という基本的な方向性を前提に、「預貯金口座が多数ある場合は増額」「所有不動産の売却が困難な場合は増額」「後見人の報告書提出が遅れた場合は減額」などと報酬が増減する参考要素を示し、検討を促した。
現在、各家裁で検討が進められているが、今後も、個別事例の最終的な報酬額は、算定方法についての議論の結果を参考に各裁判官が判断する。
親族から選任、運用拡大図る
成年後見制度をめぐっては、後見人となった親族による不正が相次いだことなどを受けて、弁護士など専門職の選任が進められてきた。ただ、最高裁は今後、親族に適任者がいると判断されるケースについては、より身近な親族後見人の選任を進めることで、利用者がメリットを感じられる運用を目指したい考えだ。
成年後見人は親族からも選任することができるが、親族が本人の預貯金を使い込むなどの不正が後を絶たず、専門職後見人の選任が広がっていた。
最高裁によると、成年後見制度(後見、保佐、補助、任意後見)の利用者数は平成30年12月末時点で21万8142人で、うち16万9583人が後見だった。
30年でみると、親族以外が後見人などに選ばれたケースは全体の約76.8%で、親族の約23.2%を大きく上回っている。一方、制度の利用者や親族からは「見知らぬ専門職に高い報酬を支払っている」との反発や、「身近な親族の方が本人のニーズをくみ取りやすい」といった要望も根強かった。