高論卓説

「サウンドを設計」する時代 健康むしばむノイズに要注意 (2/2ページ)

 サウンドロゴという言葉も、少しずつ定着してきた感のある世の中。企業名や商品をサウンドにのせてアピールする手法である。知らず知らずのうちに口ずさんでいたり、その音を聞くと「あの企業のCMだ」と分かるというのは、サウンドロゴのデザインがなされているからである。

 企業はサウンドでブランディングができることを知っている。さらに、サウンドによって人の感情を誘導できることを知っている。サウンドが人間の感情をどのように操作し影響を与えているのか。例えば、歩くスピード、購買量、滞在時間、食べる速度にも影響を与える。アップテンポのBGMが再生された環境下では、スローテンポのBGMの再生時と比べてアルコールの注文数が平均約3杯も多くなったという結果もある。

 スーパーマーケットでは、スローテンポな曲とアップテンポの曲を再生した日を比較すると、売り上げが変わるという。

 騒音がひどいと咀嚼(そしゃく)回数が増え、早食いを促してしまうそうだ。見えない聴覚に訴えかける感情誘導。気づかないだけでさまざまな場所で巧妙な仕掛けが存在することだろう。ノイズが70デシベルまでならば、会話を楽しめるが、ノイズが70~80デシベルならば、声を張り上げて話す必要が出てくる。85デシベル以上で働く人たちには、頭痛、自律神経の乱れ、不眠、難聴のリスクが出てくるという。

 従業員の生産性を下げてしまう原因がバックグラウンドノイズにもあったとすると、驚く経営者も多いのではないだろうか。メンタルヘルス、健康維持、従業員の生産性向上のために音環境を見直す必要がある。

 学校、病院、施設の環境設計の一つに、音のデザイン設計も当然のようになされる世の中になっていくことを願いたい。

【プロフィル】芝蘭友

 しらん・ゆう ストーリー戦略コンサルタント。グロービス経営大学院修士課程修了。経営学修士(MBA)。うぃずあっぷを2008年に設立し代表取締役に就任。大阪府出身。著書に『死ぬまでに一度は読みたいビジネス名著280の言葉』(かんき出版)がある。

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