約2時間のサウナ体験の間、ときどき外に出て水シャワーを浴びたり、ベランダで外気に触れたりして火照った体を冷ました。その合間に水を飲み、ソーセージやポテト、サラダなどをつまむ。リラックスしているためか普段より風が心地よく、食事がおいしい。コッコ参事官によると、この「クールオフ」も含めた一連の行動を合わせてこその「サウナ」だという。
日本の戦国時代に流行した茶の湯は、もともと武将や商人が身分や立場の違いに縛られずに「社交」を行うのが目的だった-とされる。フィンランドにおけるサウナも、似たような性質があるのではないか。狭い室内に、タオル一枚巻いたほぼ裸の状態。共に汗をかくうちに親密なオーラが室内に生まれ、これが取材であることを何度も忘れかけた。
今年は日本・フィンランド外交関係樹立から100周年の節目。サウナは日本語に定着したフィンランド語の一つでもある。コッコ参事官は「日本でサウナブームがひそかに来ていると感じており、とてもうれしい。両国の友情がより育まれていくと思います」と期待を寄せる。
テレビ付きサウナも「あり」?
フィンランドのサウナに興味を持った人は、同国のサウナを舞台としたドキュメンタリー映画「サウナのあるところ」を見るとより理解が深まるだろう。
同作に登場するのは、50年以上連れ添った夫婦や、クリスマスに一仕事終えたサンタたち、寒さをしのぐホームレスら。同国の映画監督、アキ・カウリスマキ監督の作品に出てくるような寡黙な男性が多数登場する。親から虐待を受けたこと、過去の犯罪歴、家族を失った辛さ…。出演者たちが人生の悩みを続々と吐露する重い話が続く。
その一方で、子供が生まれた喜びや、年をとってからの出会い、“親友”との絆などといったエピソードも並ぶ。人生ドラマの濃密さに圧倒されると同時に、フィンランドの人々にとっていかにサウナが多様な意味を持っているかに改めて驚かされる。
同作のプロモーションのため来日したバリヘル監督。日本のサウナも訪れたといい、「テレビが(室内に)あると聞いてびっくりしたけれど、これはこれでいいね」と笑顔で語った。
同作は東京のアップリンク渋谷などで順時公開中。1時間21分。