歯周病は危険の兆候
なぜ、犬の歯磨きが大事なのか。「歯周病は歯垢や歯石に含まれる細菌が増えることで起こる炎症。放置すると心臓など内臓にも影響を与える恐ろしい病気だ」。和泉動物病院(和泉市)の獣医師、長沢俊範さん(29)はこう説明する。3歳以上の犬の8割が歯周病という研究結果もあるという。歯垢が歯石になるスピードも、20日ほどの人に対し、犬は3~5日程度と早い。
長沢さんによると、全国的に動物病院では犬の歯垢・歯石取りは麻酔をして行うのが基本。ただ、体に負担がかかるため「麻酔をかける治療をできるだけ避けるためにも、日頃から犬も歯磨きして歯周病予防をした方がいい」という。
小谷さんの店では歯磨きはオプションだが、利用者は9割近くに上る。「飼い主にとって犬はわが子のよう。お金をかける人も増えている」といい、大阪市や和歌山市からも訪れるという。飼い主が愛犬に歯磨きすることを勧めており、店頭で扱う歯ブラシの売り上げも伸びている。
飼い主による歯磨きについて、小谷さんは「犬によって時間差はあるが、いきなり磨くのではなく、ゆっくりと段階を踏んで慣らしてほしい」と訴える。具体的には(1)口回りを触る(2)指で歯を軽くタッチする(3)歯ブラシを口に入れて歯に当てる(4)やさしく磨く-という流れ。「うまくできるたびにおやつをやり、ほめて」やることが重要だ。
犬用歯ブラシは成長分野
ラピスでは小谷さんの店に納品するとともにネットでも販売しているが、ネックは税込みで1本700~800円と高額なこと。犬の歯磨き習慣がまだ浸透していないことや、従業員が機械でブラシを取り付けるなど高コストが要因となっている。
もっとも、乾社長は犬用歯ブラシが大きく成長する分野だとみている。
国内で飼育される犬の推計頭数は平成30年で約890万頭。総務省統計局の家計調査によると、30年のペット関連費の支出額は1世帯当たり2万2667円で、12年の1万4004円から大きく増えた。住居環境の変化や室内で飼う小型犬ブーム、高齢者を中心に「ペットは家族」として飼う人が増えたのが背景にあるとみられる。
乾社長は「犬用歯ブラシはビジネスチャンス。犬の歯磨きが習慣化されれば需要は高まり、大量生産でコストは下がる。近い将来スーパーなどで小売りされる時代がくるかもしれない」と期待を寄せている。