肌寒くなり、羽織物が欲しくなる季節ですね。秋のアウターといえば、トレンチコート。実はベルトやボタンなどの細部には、さまざまな意味があります。歴史をひもとき、その由来を知ることで、着こなしをさらに楽しむことができるでしょう。
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◆塹壕戦用に開発
実はトレンチコートの「トレンチ(trench)」は塹壕(ざんごう)という意味です。塹壕とは、歩兵が銃弾や砲弾から身を守るための溝のような施設。その名の通り、第一次世界大戦中、イギリス軍が塹壕戦用に開発したのが発祥。そのため機能性が最も重視されました。その後、ハンフリー・ボガートやスティーブ・マックイーンといった名優が着用したことで、ファッションアイテムとしての地位を確立していきました。
昔の“名残”は、今も残っています。例えば、襟元に付けられた小さなベルトは「チンストラップ」などと呼ばれ、立たせた襟を留めることができます。肩から胸に掛けて付けられた「ガンパッチ」はライフル銃を発砲したときの衝撃を吸収するためのものでした。
肩の「ショルダーストラップ」には双眼鏡などを、また、腰のベルトにある金属製の「Dリング」にはナイフや手榴弾(しゅりゅうだん)といった必需品をぶら下げていました。
こうしたアイテムは、現代では付属がないことも多いです。しかし、ぜひそれぞれの成り立ちに思いをはせ、ディテールにまでこだわってみてください。