クルマ三昧

超高齢社会を意識した新型ヤリスの良心 「回転シート」で乗り降りの負担軽減 (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 新型ヤリスの試乗会で、興味深いシートの紹介を受けた。その名は「ターンチルトシート」。いわば身体に障害のある方の乗降をサポートするシートである。だが、ここでわざわざ取り上げた理由はそこではない。障害者をサポートするだけではなく、健常者への使用を提案したのが特徴なのである。

 シートそのものが、乗員を迎えるかのように回転する。コクピットの中に潜り込むような不自然な姿勢が強いられることはない。

 このシートがこれまでのウェルキャブ仕様(トヨタの福祉車両)と異なるのは、実は些細なことだ。誤解を承知でいえば、画期的な技術が投入されているわけではない。ハッとするほどの先進技術の成果ではない。だが、細部には心憎いばかりの配慮が行き届いている。

 大切なのは「福祉車両としてではなく、型式認定を取得したオプション扱い」である点なのだ。新型ヤリスでは、運転席だけでなく助手席にも対応している。

 レバーを引くと、シートが45度ほど回転して外部にせり出す。そこに腰掛ければ、内蔵したバネの力でスムーズにコクピットの中に導かれる。シートの前後スライドも可能だ。降車時も同様に、回転することで外部にせり出される。

 実際に体験すると、乗降のしやすさは明らかだ。通常のシートでは、腰を45度ほど曲げて、あるいはドアやハンドルに手を掛けて支えるようにして乗り降りしなければならない。これなら、事務机の席から立つように、力を抜いてでも立ったり腰掛けたりできるのである。

 開発担当者の中川茂氏は、熱く語る。

 「日本の高齢者率は、世界でも突出しています。現在は28%。2050年には40%近くなります。そのための対策が必要なのです」

 高齢者とは65才以上の事を指す。さらに問題があると言う。

 筑波大学の市川政雄教授の発表によると、「要介護リスク」は、運転するかしないかで影響があるという。運転を継続しているユーザーのリスクを1とすれば、運転を中止して移動手段を失うと、要介護者になる確率が2.2倍に高まるというのだ。

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