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フィギュアも漢字で、創作漢字コンテスト10年 時代映す漢字で世相を追求 (1/2ページ)

 一から漢字を作り出す「創作漢字コンテスト」(産経新聞社、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所主催)が今年、10周年の節目を迎えた。23日には、最優秀賞作品を含めた第10回の結果が産経新聞の紙面などで発表される予定。「『漢字』としてのクオリティーが、年を重ねるごとに進化してきた」。開始当初から審査委員を務める作詞家の秋元康さん(61)は、10年の変化をこう振り返る。(本間英士)

 100年先残るよう

 同賞が始まったのは平成22年。『字統』『字訓』『字通』の字書三部作を著し、18年に死去した文化勲章受章者、白川静さんの生誕100年を記念して創設された。審査委員長は大阪大学名誉教授の加地伸行さん。「100年後まで残る漢字を作ってみませんか」が賞のテーマだ。

 第1回最優秀賞は「知」と「自」を組み合わせた「わきまえる(知の下に自)」。自律の精神が薄れゆく現代社会に警鐘を鳴らすかのような、凜(りん)とした字のたたずまいが評価された。秋元さんは「知を自分でわきまえる。素晴らしい作品でした」と振り返る。

 第2回が行われた23年には東日本大震災が発生。震災に関連した創作漢字が多く寄せられた。第5回最優秀賞「じゅもくそう(木へんに葬)」は「発想力がすごい」と驚かされ、第9回最優秀賞「コンプレックス(比の下に自)」には、「自分と他人を比べがちな現代の“鏡”のような作品」と感心したという。

 「この10年の創作漢字を振り返ると、時代の見出し(インデックス)になっています。それは、僕が日ごろ作っている流行歌と同じ。『歌は世につれ、世は歌につれ』というように、流行歌を聞くとその時代の情景が思い浮かびますが、創作漢字を見ても世相の流れが分かると思います」

 年々レベル向上

 同賞の応募総数は年を重ねるごとに増加。転機となったのは第7回だ。この年は、最優秀賞に(1)いわゆる正統派の作品(2)デザイン的・視覚的面白さを追求した作品-の2種類が選ばれた。

 「第8回でいうと、にすいに舞の『フィギュアスケート(にすいに舞)』は漢字として美しく、『ティッシュ(口へんの中に紙)』の紙がピッと箱から出ている様子が思わず笑っちゃう面白さ。全体的なレベルが大きく上がりました」

 漢字はもともと4千年前の中国で、事物を写すことを中心に作り始められた。その後、日本でも「人」と「動」を組み合わせた「働」など、多くの漢字(国字)が創案された。今の豊かな漢字文化は、日中両国の先人による創作の賜物(たまもの)であり、創作漢字の魅力は「過去にどういう風に漢字が成立したのかを、実際に作ることで身をもって体感できる」点にあるという。

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