「幸せの正解は多様化している。一つの会社、一つの家にこだわらない選択もできること、移動しながらさまざまな人とつながることで新しい価値が生まれていくことを証明していきたい」
アドレスホッパーの出現について、「世の中も自分自身も、この先どうなるか分からないという価値観の現れではないか」と話すのは博報堂生活総合研究所の三矢正浩上席研究員だ。
人々の暮らしを定点観測してきた同総研が昨年7月、発表したレポートの副題は「『決めない』という新・合理」。背景にある人々の心理を「人生100年時代だからこそ、仕事や結婚などの選択を決め込みたくない」と紹介した。
また、「生き方の標準や正解が徐々に失われている」とも三矢氏は指摘する。令和に入り財界トップが相次いで終身雇用の限界に言及。家を買い、車を買い、「人生を固めていく」という親世代の「正解」はもはや参考にならない。
「それよりも身軽で変化に対応可能な自分でいるほうが戦略的に優位と、今の若者は考えています」と三矢氏は分析している。
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「モノ」にも「コト」にもあふれた時代に生まれた軽やかな暮らしがある。昨年は消費税増税を受け、「キャッシュレス元年」とも呼ばれた。「レス」はもう、ネガティブな文脈を外れている。なくても、豊かな生き方をたずねた。