鳥取県に、バーチャル都市と姉妹都市提携している全国でも珍しい自治体がある。県中部の倉吉市。平成28年に音楽配信コンテンツ「ひなビタ♪」に登場する架空都市・倉野川市と姉妹都市を提携した。「ゲゲゲの鬼太郎」や「名探偵コナン」に続く“聖地”として、地元も盛り上がっている。
レトロな街並みに「萌えキャラ」
古い家屋や土蔵が並ぶ鳥取県倉吉市の「白壁土蔵群」。重要伝統的建造物群保存地区で、趣のある建物が軒を連ね、各店舗では「ひなビタ♪」に登場するキャラクターのパネルが出迎えてくれる。
ひなビタ♪は、大手ゲームメーカー、コナミデジタルエンタテインメントが展開する音楽配信コンテンツ。架空の地方都市「倉野川市」の寂れた商店街に生まれた5人の女子中高生がガールズバンドを結成し、商店街に活気を取り戻そうと奮闘する姿を描いている。キャラクターの活動はフェイスブックなどで伝えられ、楽曲を配信する。
この倉野川市のモデルとされているのが倉吉市で、風景や建物がそっくり。ファンの間で「倉野川市は倉吉市に似ている」と評判になった。
市の調査によると、訪れたファンの半数以上が20代男性で、リピート率は77%。関東からが最も多く、一般の観光客と比較して滞在日数は2倍、観光消費額は1.5倍。しかも昨年4月以降、少なくとも6人のファンが移住したという。
倉野川市と姉妹都市提携
ひなビタ♪の誕生は24年だが、倉吉市は27年夏までその存在を知らなかったという。市は大手フィギュアメーカー、グッドスマイルカンパニー(東京)の工場が市内に完成したのを機に27年4月、ポップカルチャーを活用した町づくりに着手。その後、判明したのが倉野川市の存在だった。
倉吉市は28年4月1日に倉野川市と姉妹都市提携を締結。架空都市との姉妹都市提携について、倉吉市は「当時から漫画やアニメの舞台となった土地を訪ねる聖地巡礼が盛ん。若い人たちの誘客につなげたかった」と狙いを語る。
市民が、ひなビタ♪のパワーを目の当たりにしたのが、姉妹都市提携の約2週間後に市内で開かれた「くらよし桜まつり♪」。ふだんは中・高年の観光客が目立つ中心市街地が若い人であふれた。
キャラごとに誕生祭
「桜まつりの日に突然、店の前に行列ができた」と話すのは中華料理店「新来軒」の店主、マダムヤンこと平久美樹さん(55)。桜まつりをきっかけに全国からひなビタ♪ファンが訪れるようになった。
それ以降、平久さんは、ファンの名前を付けた定食などのメニューを開発。イベントの夜には採算度外視でバーベキューを開くなどしてファンと交流を深めている。スマートフォン、手作りのパソコン、店内の黄色いイス…。たくさんのプレゼントもファンからもらった。誘われて「マダム・ヤン」のアカウント名でツイッターも始めた。
「まるで家族のような感覚」と平久さん。「倉吉は何にもないところだと話したら、ファンから『おばちゃん何言ってるの。ここはいい町だよ。みんな優しいよ』といわれた。自分が住む町を好きにならないといけないと教えられた」と話す。