社会からの孤立
厳しく規制されるのは、薬物そのものの作用のほかにも理由がある。関西学院大の佐藤哲彦教授(社会学・薬物政策研究)は「暴力団など反社会的勢力の資金源となっていること。もう一つは、薬物を所持・使用した人が社会から孤立し、キャリアを失うなどの損害を被ることだ」と指摘する。
海外では一部薬物について個人的な所持に刑罰を科さない「非刑罰化」や、所持を法律で禁止しない「合法化」の潮流も一部であるが、だからといって安全なわけではない。むしろ薬物が蔓延(まんえん)してしまった結果、やむなく「非刑罰化」「合法化」したという面がある。
いわゆる違法薬物を1回でも経験した「生涯経験率」は日本が覚醒剤0.5%、大麻1.4%、MDMA0.2%なのに対し、米国(覚醒剤4.9%、大麻44.2%、MDMA6.6%)、カナダ(4.8%、41.5%、4.4%)、フランス(2.2%、40.9%、4.2%)と、欧米は軒並み高い。佐藤教授は「西洋諸国では若者の薬物使用を厳しく取り締まった結果、彼らのキャリアを摘み、社会的にも損失だと考える風潮が起こった。日本では、薬物を持ち込ませない水際作戦や厳罰化が浸透している」と指摘。海外の傾向は、薬物を完全に断つことがいかに困難であるかを示している。