GT-RとZを雪上で走らせると…
VDCの恩恵を特に強く感じたのは、高性能スポーツカーを駆った時だった。滑りやすい雪道でハイパワーのGT-Rやマニュアル仕様のフェアレディZ(しかもハイパフォーマンスモデルのNISMOバージョン)に乗るのは初めての経験だったが、そこそこの速度でコーナーに飛び込んでも常に安定した姿勢を保ちながら、思い通りに操ることができるのだ。これは元々の優れた基本性能に加えて、VDCを含めた様々な電子デバイスが適切な制御を行うことで、ドライバーの技術不足やエラーを上手に矯正しているのだ。制御があまりにもさりげなく自然に介入するので、まるで自分がとてつもなく凄いドラテクを持っているかのような錯覚すら起こしてしまう。おかげでGT-RとフェアレディZは雪上でも抜群に楽しいクルマだった。正直、ショートコースを数ラップ回るだけでは物足りなかったぐらいだ。
しかし、ある意味、この2車種を超えるこの日最大のサプライズは、なぜか商用ミニバンのNV350キャラバンが用意されていたことだった。ハンドルはかなり上向きで、高い運転席から見下ろすドラポジは独特のワクワク感がある。駆動方式は後輪駆動(FR)の2WDと4WDの切り替えが可能で、このクルマでパイロンの周りをぐるぐるとドリフトする「定常円旋回」を試せというのだ。とはいえ筆者には滑らかに連続旋回する技術もなければ、クルマに快適性もない。キャラバンは満載の荷室を想定してサスペンションの味付けをしているので、空っぽの状態だとロデオの荒馬乗りも斯くや、というぐらいにポンポンと跳ねるのだ。しかもアンダーステア(ハンドルを切っても旋回が追い付かずアウトに膨らむ状態)の出るFFと違ってFRだから、見た目に似合わずグイグイとインに切り込む。こんな状態でも海外のジャーナリストは血眼にドリフトを試みるのだから、日産スタッフの爆笑が止まらないのも許せてしまう。しかしよくよく考えると、時として過酷な環境で使用する商用バンだからこそ、路面を問わず優れた走行性能が求められるのであり、雪上試乗会が場違いでもなんでもない事に途中で気付いた。
ともあれ、電動車の操縦性や走行性能の高さは雪上でもしっかりと確認できたし、モーターやエンジンの異なるパワートレインやFF・FR・4WDによる駆動方式の違いがもたらす挙動やハンドリングの特性も存分に楽しむことができた。個人的に最もエキサイティングだったのはGT-RとフェアレディZだったが、すべてのモデルに共通していたのは雪上でも高い基本性能と安心感だった。そして、こういったイベントを通じて路面状況や車両特性に応じた運転テクニックを磨き、クルマがどのようにしてコントロールを失うのか自らの体験をもって理解することが重要でもあるのだ。
【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。アーカイブはこちら