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五輪選手村「晴海フラッグ」はニューノーマル マンションポエムには頼らない (2/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 ユニークな立地も、まずは盛況

 中央区での希少な超大規模開発案件、眺望や都心近接の利便性の魅力の一方、リノベーション物件であることや必ずしも地下鉄駅(勝どき駅)最寄りと言えない立地の関係で超都心にしては若干リーズナブルな平米単価。また面積や間取りのバリエーションの豊富さが人気に貢献しているようです。

 それにしても、高額物件であるに変わりはなくどんなお客さんが買っているのかというと、近隣の湾岸タワマンからの買い替え需要のほか、伝統的な郊外の一戸建て中心の住宅地から移る予定の方も相当数いるということで「埋め立て地の集合住宅」に対するアレルギーを持つ人も少しずつ減ってきたのかもしれません。

 フラッグをイメージしたアイコンに集約

 ブランディング的には太陽、空、海、緑をアイコン化したロゴがとても目立ちます。「太陽が降り注ぎ、空と、海に囲まれ、4000本の緑を植樹し将来緑にあふれるだろう晴海フラッグの環境」そして「空から見たとき海に囲まれフラッグのように見える敷地」をイメージしているとのこと(三井不動産レジデンシャル東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室主管の古谷歩氏)。

 大規模マンションの販売と言えば、とかくタレントを起用、かつてはリチャード・ギアやマドンナなど明らかに日本の集合住宅に住むことが想像できない海外セレブの登場もありました。

 また、やたらに購入検討者の夢と情緒に訴えるスタイルの「マンションポエム」とネット上でからかわれるおおげさなコピーもお約束でしたが、晴海フラッグの訴求は明らかにそれらと一線を画すシンプルさです。大戸数、シングル、大家族、若い世帯、パワーカップル、リタイアした夫婦など、幅広いターゲットの想定も背景であると思われますが、タレントもマンションポエムも使わないニュートラルな訴求がむしろ好意的に受け取られているように見受けられます。

 不動産こそ購入後のブランディングが重要

 もう一点見逃せないのが、「販売したあとの街のブランディングまで考慮して」(前出古谷氏)という視点です。とかく不動産物件の販売は売ったら売りっぱなしと言われます。1軒1様。しかも買う方も、往々一生に一度の買い物ときています。デベロッパーも売って所有権を引き渡したあとは実質的な関係性を失うことも事実。売ったあとの物件や街のブランディングまで責任を持てないというのが実態です。 ですが本来、買ってから始まる住まいや街のブランディングこそが住人にとって、住まうプライド、信頼感、資産価値などあらゆる面で重要であるはずなのです。

 実際に、販売入居の時点では鳴り物入りだったものの、住民の高齢化とともに輝きを失ってしまった大規模な開発地の残念な事例は少なくありません。ぜひ、この晴海フラッグが、デベロッパーから入居者にブランディングコンセプトも引き継がれる先行事例となり、その後住民が愛着をもってわが街のブランディングとして磨きをかけることに期待したいと思います。

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