紙氏「欠かせぬ反省と先住権」
--ウポポイ活用の在り方は
「アイヌの尊厳を守り、文化の異なる民族の共生を尊重し歴史や文化を学び伝え、振興を図るナショナルセンターという位置づけは大事。アイヌの人たちの意向を生かし趣旨通り運営されるべきだ」
--観光利用に偏る懸念は
「明治政府が同化政策でアイヌの人たちを先住地から追い出し、権利を取り上げた歴史を偽らずに展示し、反省することが大切。差別されてアイヌだと名乗れず、そっとしてほしいという人がいる背景が理解されるようにしないといけない。自然の恵みに感謝し自然と共生するアイヌ民族の考えや風習も伝えるようにすべきだ」
--アイヌ施策推進法の評価は
「私たちは日本の法律で初めてアイヌが先住民族だと書き込んだ点を重要と考え、賛成した。ただ、先住権についてはほとんど盛り込まれず不十分で、発展させていくための議論が必要。法律では『アイヌの人々』と表現したが、アイヌの人たちが求めている言葉は『アイヌ民族』。課題は多い」
--地域振興が施策の柱だ
「アイヌの人たちの意向を反映した自治体の計画に交付金が出されることが大事。アイヌと関係のないところに資金を使ってはならず、相当丁寧にやる必要がある」
--アイヌの認定で課題は
「誰がアイヌで、アイヌでないかの調査は難しさがある。自治体の調査に応じない人もいるので、信頼関係を基にアイヌの人たちに確認するしかないかもしれない」
--土地の権利など先住権を認めると国家の分断を招かないか
「アイヌの『聖地』へのダム建設の差し止めを求めた訴訟の判決で札幌地裁は1997(平成9)年、アイヌ民族を先住民族と認め、文化享有権が(個人を尊重する)憲法13条で保障されていると判断したが、それによって分断されたかといえばそうではない。ビルが建つ札幌の土地などを元に戻すのは大変だが、何ができるかを全く議論しなくていいわけではない。例えば、アイヌの人たちにはサケを儀式だけでなく生業として取りたいとの思いが強い。もっと取れるように調整できるのではないか」
--遺骨の扱いの在り方は
「遺骨を取り戻す運動は、先住民族の権利獲得の中核をなすものだとの指摘があるが、アイヌ政策推進会議で示されたガイドラインでは返還の決定権は遺骨を持っている大学にあり、アイヌ側にないことが問題とされている。また、慰霊施設に移して終わりではなく、アイヌの人たちが求めるように対応すべき。アイヌの風習では亡くなった人は土に戻り、祈りなどはしない。施設で勝手なことをやってはいけない」
(村山雅弥)
かみ・ともこ 昭和30年、北海道出身。北海道女子短大卒。平成13年の参院選比例代表で初当選、現在4期目。共産党常任幹部会委員、党農林・漁民局長。超党派の「アイヌ政策を推進する議員の会」に参加している。