一方、国公立館は政府や自治体の判断に従い、開館の是非を決めている。都内では、国立館や都の美術館の臨時休館が続く一方、板橋、世田谷、練馬、目黒の各区立美術館は展覧会を開いている。
世田谷美術館は抽象絵画のパイオニアとして活躍した洋画家、村井正誠(1905~99年)の回顧展を開催中。人物モチーフのおおらかな絵画、ユーモアのあるオブジェ、アトリエに残されていた民芸品などを並べ、村井の作品を生み出した「あそびの空間」を演出している。
世田谷区の判断基準に沿ってワークショップなど濃厚接触の危険性があるイベントは中止したが、展示室は混雑していないことから感染症対策を講じた上で、今のところ展覧会を続行している。
細心の注意
手すりなど施設のこまめな除菌、スタッフの検温やマスク着用。来館者用にも手指消毒液を増設し、体温37・5度以上での入館自粛、咳エチケットを求める…。感染予防・拡散防止へ、各館はできる限りの対策を続けている。
兵庫県立美術館(神戸市中央区)もこうした対策をした上で17日、「ゴッホ展」を2週間ぶりに再開した。県の主催事業の自粛解除に伴うもので、クラスター(感染者集団)の発生を引き起こす「換気の悪い密閉空間」「人の密集」「近距離での会話、発話」を避けるため、混雑状況を見て入場制限もしている。
「再開を楽しみにしていた」「感染症対策をしていて安心した」と来場者からは好意的意見が目立ったが、同館によると「この状況で何を考えてるんや、とお叱りの電話もあった」という。「個人的には、文化施設は開いてこそ社会的な存在価値があると思っている」と古巻和芳営業・広報課長。新型コロナウイルスの感染状況をにらみつつ、各館の出口の見えない闘いは続く。