ローカリゼーションマップ

風評被害を招く感染拡大の背景分析 限られた異文化理解の適用は自戒が必要 (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 ストックホルム経済大学でイノベーション・リーダーシップを教える経営学者のロベルト・ベルガンティが、この数カ月、次のことを盛んに話している。

 「かつて、リーダーシップとはどんな状況にあっても『私は何でも知っている』という態度が主流だった。しかし、今は違う。未知の事態に『私には分からない』と最初に言うのが大事だ。そして『でも、これを知りたいとの好奇心が働くから、みんなで一緒に探索してみようよ』と語りかけるのが、求められるリーダーシップだ」

 ぼくは、今、このセリフを前述した「文化的知識や経験の不適切な適用」に結びつけて考える。

 新しいタイプのウイルスのことなのだから「分からない」が第一にくるはずなのに、「どうせ風邪みたいなものでしょう」で未知の部分を抑え込み、「たいしたことのないウイルス」に社会全体が振り回されるのは、なにか社会的な文化的な欠陥もあるのではないかと勘繰るわけだ。

 文化的な知識や勘は自分で行動を起こすときの確信に貢献するが、医療現場を第三者が分析をするためにはあまり役立たない、ということではないか。役立たないだけでなく、風評被害のもとにもなる。

 これが自戒もこめた、ローカリゼーションマップを使うにあたっての注意事項だ。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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