治療中でも楽しいことは作れました。体力が落ちて一眼レフのカメラを持つことができなくなりましたが、スマートフォンなら片手が動けば写真が撮れる。点滴用のスタンドとか何気ない風景がかっこよく切り取れました。自分の姿や病院から見える景色…。1年で5千枚撮影しました。
治療がひと段落した26年12月から、大学病院で患者やその家族、医療関係者が撮った写真にストーリーを添えた作品を集めた展示会も病院スタッフと協力して始めました。「笑顔」や「治療中に見つけた素(す)敵(てき)な瞬間」というテーマ。「温かい写真だね」と反響もありました。今は「がんフォト*がんストーリー」という投稿型のオンライン写真展も運営しています。がんになっても、誰かに力を与えることはできるんです。
「命の限り」を意識したことで、自分にとって価値のあることは何かを考えるようになりました。がんになる前より、今のほうが充実した人生を送ることができています。
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きぐち・まり 昭和50年生まれ。埼玉県出身。旅行や日本文化を紹介するフォトグラファーやライターとして活動していた平成25年5月、子宮頸がんと診断される。2度の手術後、抗がん剤治療を受ける。経過観察中に合併症で腸閉塞に。一時は人工肛門の生活も経験した。