お金で損する人・得する人

失業、感染…コロナ禍に見舞われた人が受け取れるのは 社会保障制度の活用法 (3/3ページ)

高橋成壽
高橋成壽

 なお、個人事業者は、国民健康保険の加入が前提となり、傷病手当金自体がありません。ただし、制度自体は自治体などが任意で条例で制定することができます。新型コロナウイルス感染症に感染した人、感染が疑われる人については、すでに制度として導入した自治体が傷病手当金を支払う場合、国が財政支援を行うことになりました(該当する自治体は多くありません)。

 会社や通勤途中で感染したらもらえるお金=労災保険の休業補償

 前述の傷病手当金のところで、業務外とあったので勘のいい人はピンと来たかもしれません。実は、職場や通勤で新型コロナウイルスに感染した場合、労災扱いと認定される可能性があります。職場であればすぐに確認できますが、通勤途上での感染ですと立証が難しいかもしれません。ただ、感染者は直近の生活状況をヒアリングされますので、職場か通勤以外に感染可能性のある経路がなければ労災と認定されることもありそうです。

 労災認定されるといくらもらえるのでしょうか。

 新型コロナウイルス感染が労災認定された場合、労災保険から休業補償を受けることができます。まずは条件を整理します。

 (1)業務上の事由、または通勤による疾病の療養であること

 (2)労働することができないこと

 (3)給料が発生していないこと

となります。従って、有給休暇での対応は対象外となります。傷病手当金との違いは、業務外は傷病手当金、業務上の場合は労災での補償となります。

 支払われる金額の算出方法ですが、まず給付基礎日額といって、賃金を日割りに直します。給付基礎日額=直近3カ月の給料(ボーナス除く)の総額÷暦日数です。この給付基礎日額の60%を休業補償給付として、20%を休業特別支給金として受け取ることができます。

 休業補償給付の支払いは、休業4日目からとなります。傷病手当金と似たイメージですね。

 いかがでしょうか。政府から勤務先への助成金とすでに制度化されている社会保険を知っておくと、ご自身や周りの人が感染した場合などにどのようなお金が受け取れるのか、いくらくらい足りないのかなど考えておくことができるでしょう。

 改めて、日本の社会保障は充実しているとともに、国民に情報が行き届いていないと感じます。今後は、全国の自治体が傷病手当金を導入することで、個人事業の人たちも安心して生活ができるようになるでしょう。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら

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