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ステイホームの味方「カトキチ さぬきうどん」 癒される実直ブランディング (2/2ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 パッケージも、調理仕上がりのイメージ写真を“どーん”と出した、分かりやすさが身上。最大出力カットのパッケージイメージ写真と実物に多少の落差があるのはご愛敬でしょう。

 本格的な食感が大人気の冷凍うどん 

 さて、そんな冷凍食品の中でも常にトップクラスの市場規模を確保しているのが冷凍うどんです(日本冷凍食品協会より)

 電子レンジで3~4分ほど加熱するだけの手軽さの一方で、本格的過ぎるコシとツルツル感の美味しさは初めて食べると衝撃を受けるほどです。しかもお値段もかなりリーズナブル。ネット上でもその味の本格さが話題となり、口コミが人気を後押ししたことで年々堅調に売上を伸ばしています(冷食日報より)

 讃岐うどんの名店を感じさせるたたずまい

 あらためてトップブランドの「カトキチ さぬきうどん」のパッケージを見ると、あっけないほどのシンプルさ。失礼ながらデザインという意図が感じられないといったらよいのでしょうか。かなりの自然体です。

 でも加ト吉ブランドの由来を聞いて納得しました。

 1956年香川県観音寺市、讃岐うどんの本場で生まれたのが加ト吉とのことです。その後、JTによる買収などを経てテーブルマークという社名になっていますが、この「さぬきうどん」など一部商品では伝統の「カトキチ」ブランドを残しているとのことです(現在のテーブルマーク本社が旧築地市場隣接というのも、生粋の食品企業感があります)。

 そんな由来を聞くと、確かに本場の美味しいさぬきうどん屋さんも決して趣向を凝らした様子でないなと思い当たります。農家さんなんだか民家だかわからない看板が出てないお店こそ、地元の常連さんが太鼓判を押す店だったりします。そんな都会人が考えるマーケティング的な”しゃらくささ”の対極をいくような在り方に、食べ物を提供する人やお店としての誠意がお客さんには伝わるのかもしれません。逆に言えば、外見ばかりにこだわって、肝心の味や品質が二の次というのはこと食べ物に関してはまったく魅力がありません。

 そういう意味で人気の冷凍うどんトップブランドの「カトキチ さぬきうどん」パッケージからは、そんな食品としての真っ当さや実直さが自然とにじみ出ているように感じられます。

 パッケージデザインやネーミングの提案をしている我々からすれば、それでOKで良いの? という部分はありますが、ブランディングの本質は、何も装飾したり演出したりすることではなく、その会社、製品の持っている本質的価値を表現し伝えることです。そういう意味では「カトキチ さぬきうどん」のブランディングは非常に成功しているように思うのでした。

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ) ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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