鉄道業界インサイド

新幹線の「特大荷物スペースつき座席」運用開始、事前予約が必要なサイズは? (2/2ページ)

枝久保達也
枝久保達也

 特大荷物スペースはこれまで、乗客共用の荷物置き場として使われてきたが、盗難や取り違いのリスクがあることや、誰のものか分からない荷物が置かれているのはセキュリティ上好ましくないという問題があった。またこのスペースに大型の荷物を置くと最後部の座席がリクライニングできなくなるなど、旅客同士のトラブルに発展することもあったようだ。

 さらに導入を決定した当時は、訪日外国人旅行者の増加により、車内に大きな荷物を持って乗車する利用者が増えていた。そこで、最後部座席と荷物スペースをセットにして販売することで、荷物管理の問題とトラブルを一挙に解決しようとしたというわけだ。

 JR東はどうする?

 利用者からすると、手間のかかる予約制度ではなく、荷物置き場を拡充するなど、ハード的な対応を求める声もあるだろう。実際、JR東日本は今回の「特大荷物スペースつき座席」には加わらず、新型新幹線車両の導入にあわせて大型の荷物置き場を設置・拡大する方向で対応を進めている。

 JR東海も2023年度までに「N700系」新幹線のデッキにある洗面所のうち1か所を鍵付きの荷物コーナーに転換する計画を発表している。将来的にリニア中央新幹線が開業し、東海道新幹線の座席数にゆとりができれば、こうした荷物スペースを拡充することも可能になるだろう。

 しかし、現時点では輸送効率を最大化するために、座席数を最大限確保するとともに、全ての編成で定員を統一しているため、現状の設備で可能な範囲の対応として特大荷物スペースつき座席の提供に踏み切ったものと思われる。

 ではこの新制度はすんなりと定着するのだろうか。幸か不幸か、新型コロナウイルスの感染拡大と外出自粛の影響で、東海道新幹線は前年比90%近く乗客が減少しており、訪日外国人も姿を消した。

 今後、徐々に外出自粛が緩和されるとしても、当面は新幹線が混雑することはないだろうから、特大荷物スペースつき座席を巡って混乱やトラブルが発生する懸念は小さい。一方、新型コロナウイルスによる混乱下ということもあり、新制度が十分に周知されたとは言い難い面もある。各社には、乗車券購入時や改札での声かけなど、利用者への丁寧な対応を期待したい。

枝久保達也(えだくぼ・たつや)
枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

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