ライフ

板がないかまぼこ? 四角に丸い焼き目「なんば焼」の魅力 (1/2ページ)

 一風変わった板なしかまぼこが和歌山県中部で綿々とつくられている。白い正方形で、真ん中に丸く大きな焼き目が入った「なんば焼(やき)」だ。老舗の製品は直径10センチを超え、弾力ある歯ざわりが特徴。かまぼこは板付きが定番で、板には水分を除くなどの役割があるが、なくてもおいしいかまぼこができるという。製造するのは十数業者のみ。県外にはあまり出回っていないが、独特の外観と味わいを愛する人は少なくない。(張英壽)

 板付きは安土桃山から

 全国の約600業者が加盟する日本かまぼこ協会によると、かまぼこに板がついたのは、安土桃山時代からとされる。板は、成形しやすいという利点のほか、蒸したり冷やしたりするときに、余分な水分を吸う効果もある。

 板付き以前は現在のちくわのように棒にすり身を巻いて焼いた形で、植物の蒲(がま)の穂に似ており、蒲の穂が鉾(ほこ)のようだったため、蒲鉾(かまぼこ)と呼ばれるようになったという。

 昭和50年発行の「かまぼこの歴史」(清水亘著)によると、古文書の「類聚雑要抄(るいじゅざつようしょう)」に、平安時代の1115年の祝宴に出されたかまぼこの図があり、串に巻かれたようなかまぼこが描かれている。

 日本のかまぼこは地方ごとに特色ある製品がつくられているが、小田原かまぼこに代表されるように板かまぼこが一般的だ。板なしの製品はなんば焼のほか、仙台名物の笹かまぼこや、コンブを巻き込んだ富山県の巻きかまぼこなどがある。

 製法は欧州から?

 なんば焼は、和歌山県中南部の中心都市・田辺市と、周辺の白浜、みなべ、印南の3町だけでつくられており、製造しているのは12業者のみ。

 このうち創業約150年で最も歴史が古い「たな梅本店」(田辺市)によると、なんば焼は、江戸時代の後半につくられるようになったという。漢字で書くと「南蛮焼」で、林智香子専務(62)は「南蛮(なんばん)と呼ばれたヨーロッパから製法が伝わったのかもしれない」と推測する。

 正方形のなんば焼は上部がやや盛り上がり、真ん中に丸い茶色の焼き目が入っており、目玉焼きや四角いパンケーキのようにも見える。その独特の外観は製造過程と関係がある。板かまぼこは蒸してつくられるが、なんば焼は鉄板でじっくりと焼いていく。

 現在のかまぼこ業界では魚の冷凍すり身を使うことが多いが、たな梅本店では、主に近海で取れたエソやグチを皮をそぐなどしてすり身にしている。そこに塩を加えて粘り気を出して成形し、鉄板の上で約40分間じっくりと焼く。すり身を盛るため上部はやや盛り上がり、ひっくり返したときに自然にその部分が焼け、これが真ん中の大きな焼き目になる。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus