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板がないかまぼこ? 四角に丸い焼き目「なんば焼」の魅力 (2/2ページ)

 さらにもう一度、ひっくり返して焼けば完成。大きさは直径約12センチ、厚さ約3センチ。弾力ある食感と自然な魚の甘さ、塩加減が絶妙だ。5代目の鈴木隆平社長(57)は「魚が持っている本来の味を生かしている」と胸を張る。

 焼き目で覆い水分保つ

 田辺市などの業者がつくるご当地かまぼことしては、すえひろや地紙(じがみ)と呼ばれる扇形の蒸しかまぼこも有名だ。ほかに魚の皮やゴボウを使ったごぼう巻もある。これらも板を使わない。水分を取る板がなくても大丈夫なのか。

 なんば焼などを製造する昭和8年創業のマルサ(田辺市)の3代目社長、左海(さかい)伸和さん(50)は「なんば焼は焼くと、不要な水分が飛んでいく一方、焼き目で表面がコーティングされて必要な水分は逃げにくくなる」と説明。すえひろ・地紙については「蒸していく過程で、水分は湯気となって出ていく」とみる。ごぼう巻はそもそも使うすり身が少ないので、「そこまで水分を気にしなくていい」。

 たな梅本店の林専務も「板を使わなくてもおいしいかまぼこはできる」と話す。ちなみに富山県の巻きかまぼこも、県蒲鉾水産加工業組合の担当者によると、「板の代わりにコンブが水分を吸収してくれる」という。

 独特の味わいと外観が魅力のなんば焼だが、和歌山県外ではあまり流通していない。たな梅本店の県外卸先は大阪が中心で東京は少なく、ほかの地方はほとんどないという。県内のみに出荷する業者も多い。

 林専務は「大阪では和歌山県に来たことがある人はある程度知っているが、関東では小田原かまぼこが強く、知名度は低い」という。ただ、「利益だけを追求するより、『ぜひ売ってみたい』というところに卸したい」とこだわりをみせる。

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