鉄道業界インサイド

“最高の新幹線”「N700S」デビュー 見た目だけでは伝わらない驚異的進化 (2/2ページ)

枝久保達也
枝久保達也

 東海道新幹線は冬季、雪の影響でしばしばダイヤが乱れることがある。この対策として、台車カバーの形状を変更することで、台車周辺に流れ込む空気を抑え、車両への積雪を低減している。また、台車に融雪ヒーターを設置することで、付着した雪が融けるようにしている。東海道新幹線は今年3月のダイヤ改正で「のぞみ」を最大毎時12本運行できるダイヤを導入した。列車本数の増加は遅れの拡大にもつながりやすいため、こうした様々な対策で輸送の安定性の向上も目指している。

 もちろん環境性能も大きく向上している。駆動システムに次世代半導体SiC(炭化ケイ素)を採用。また先頭形状は新しい「デュアルスプリームウイング形」を採用するとともに、台車周辺の空気の流れを整えることで走行抵抗を削減。これにより電力消費量は従来型車両よりも6%減となっている。

 様々な両数の編成に組み替え可能

 だが、「N700S」最大の変更点は、乗客には見えない部分にある。省エネ性能に寄与する新しい駆動システムがここでも威力を発揮し、床下機器を55%小型化するとともに、約600kgの軽量化を実現。これにより複数の機器を同一車両に搭載することができるようになり、床下機器の配置パターンを8種類から4種類に削減した。この結果、「N700S」では同一設計のまま、12両編成、8両編成、7両編成、6両編成など様々な両数の編成に組み替えることが可能になったのである。

 とはいっても「N700S」のデビューにより東海道新幹線が12両や8両になるという意味ではない。これは新幹線技術を海外に売り込むために、コストを抑えつつ設計の自由度を高めたいというのが、その狙いだ。そうした意味でも「N700S」が、これまでの新幹線技術の集大成となる「Supreme」な車両であることがお分かりいただけるだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、全国で鉄道利用者数が大きく減少するなど、鉄道会社は苦境に陥っている。しかし、それでも乗客が再び戻って来る日のために、東海道新幹線の進化は着々と進んでいる。

枝久保達也(えだくぼ・たつや)
枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

【鉄道業界インサイド】は鉄道ライターの枝久保達也さんが鉄道業界の歩みや最新ニュース、問題点や将来の展望をビジネス視点から解説するコラムです。更新は原則第4木曜日。アーカイブはこちら

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