クルマ三昧

クルマのEV化がタイヤエンジニアを悩ませる? 静粛性の要求「厳しくて」 (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 打撃音、切り裂き音や膨張音

 タイヤの音源は様々だ。タイヤが転がる時、実は路面に接するゴムは路面を高速で回転しながら叩いている。その打撃音が主たるタイヤノイズの源だ。ゴーゴーと唸っているのがそれだ。

 タイヤが高速で回転するとき、トレッド面(タイヤが路面に接する面)に刻まれた溝が空気の壁を切り裂く。その際に発する風切り音もノイズの原因になる。シャーシャーと耳に届く高周波の音はそれであることが多い。

 路面の凹凸を吸収する際にはタイヤはたわんだり反発したりを繰り返す。その際に発する膨張音もノイズである。耳をそば立てれば、サッカーボールが弾むときのような、ポコポコとした音を意識することができるかもしれない。それほどタイヤノイズは様々なのである。

 とは言いつつも、タイヤを高速で回転させないわけにはいかないし、切り裂き音の原因になる溝を減らしてしまっては、ウエット性能は深刻なレベルにまで落ちる。レース用の溝のないタイヤが証明するように、とてもじゃないけれど雨の日にクルマを走らせることはできなくなる。ポコポコとしたノイズを嫌ってタイヤを変形させなければ、乗り心地の悪化は避けられない。ノイズ発生の原因を取り除くことはできないのに、高い静粛性が求められているのだ。

 とあるタイヤエンジニアは頭を悩ます。「EV化によってタイヤが注目されていることは喜ばしいのですが、要求が厳しくて…」。いまいちど、タイヤの叫びに耳を傾けてみるのも悪くはないのかもしれない。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。

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