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資産運用のリアルな実態 ピケティのr>gが差を広げる その2・ヘッジファンド (2/2ページ)

高橋成壽
高橋成壽

ヘッジファンドと投資信託の哲学の違い

 ヘッジファンドの最大の特徴は絶対利益の獲得です。絶対利益とは相場の状況にかかわらず利益を上げ続けること。マイナスの成果は期待されていません。

 投資信託の場合は、相対的な評価となりますので、下げ相場であれば、基準とする日経平均やTOPIXのような市場平均に対してどの程度上回ったかという評価になります。従って、TOPIXが5%下落しましたが、ファンドは4%下落したのでファンドとしての成果は出ている、という場合投資信託であれば市場に勝ったということで評価されます。一方でヘッジファンドの場合は、TOPIXが何%下落しようが、利益はプラスを求められます。当然、TOPIXがプラスの値動きであれば、それ以上の成果を求められるのです。

 他にもヘッジファンドごとに投資哲学が定まっており、運用哲学に沿った成果が求められるのも投資信託とは違います。

富裕層のみ許された投資先

 大きなヘッジファンドになると運用資金は兆円単位になります。投資内容がブラックボックスにあり投資内容が公開されていないため、投資信託には当然のディスクロージャー(情報公開資料)はありません。

 従って、投資するかの判断は知名度、過去の成果、運用哲学次第となります。もちろんファンドとしての資料はありますが、日本の投資信託のように事細かく開示されることはありません。

 投資については常に門戸が開かれているわけではなく、ファンド立ち上げの時だけ募集するファンド、定期的に資金を募集するファンド、非定期に資金を募集するファンド、常時資金を募集しているファンドがあります。

 資金の引き受けを行うかはファンドの判断となり、お金を持っていれば誰でも投資できるわけではありません。例えば日本から投資する場合、特定の会社を通さなければ投資させてくれないということもあります。最低投資金額が高額なのも特徴です。投資しやすいファンドは10万ドルから、一般的には100万ドルからともいわれています。

気になる運用成果は?

 ヘッジファンドもピンからキリまであり、いい成果のファンドもあれば悪い成果のファンドもあります。筆者が情報を得ているファンドは投資手法がそれぞれ違うのですが、毎月安定プラス収益をあげるファンドから、値動きが大きいものの市場を大きく上回る成果を上げるファンドまで様々です。息の長いファンドは毎年着実に10%近いプラスの運用を続け、一方で成果の出ないファンドは解散していきます。運用成果は過去のパフォーマンスを確認するしかありませんが、投資の基本戦略が定まっているため、おおよそどの程度の利回りの範囲に入るかは目星がつけられます。

 今回のヘッジファンド、前回の外国債券が、日本人投資家に不足しているパズルのピースです。自分で株式を売買することを楽しむことも知的格闘技としては楽しいかもしれません。しかし、資産を増やす、成長させるということを考えた場合には、個人での運用では限界があります。今後、日本国内でもヘッジファンドの購入が一般的になることで、日本人の資産運用に対する認識は大きく変わるでしょう。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら

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