心を見える化する「感情メモ」
アプリには、チャットボットとの対話を通じて自分の気持ちや思考を“見える化”する「感情メモ」という機能があり、認知行動療法の知見を活かして作成されたチャットボットの質問にユーザーが回答。「喜び」「期待」「不安」などの自分の感情が心の何割を占め、それらはどのような出来事に起因して発生したのかをアプリ側が整理する仕組みという。さらに、ユーザーの「感情メモ」が蓄積されると、集計、分析した上で「感情レポート」が作成される。アプリのユーザーがそれまで抱いていた感情や思ったことを客観的に見つめ、自分自身への“気づき”を得ることができるとしている。
熊野教授は「モニタリングした内容が、自分にとって望ましい方向に変化していくことが知られている。例えば、体重や喫煙本数を毎日記録するといったことだけで効果がある」とセルフモニタリングの効果を解説する。
「感情メモ」の作成では、チャットボットから「できごと」「感情の種類と強さ」「考えたこと」「状況の整理」の4つの項目が提示される。対話をするように順番に回答していくと、最後に回答した内容に基づいてメモが作成される。週末にはユーザーに「週間レポート」が届き、それまで感情メモに記録した出来事や感情がグラフ化される。この1週間どのような経験をし、どのような気持ちだったか可視化されることでセルフモニタリングができるという。
アプリには瞑想を実践できるオーディオ機能もある。「すきま時間の3分瞑想」というオーディオコンテンツでは、リラクゼーションを促すような音楽が流れ、瞑想中に意識するべきことを説明するナレーションが再生される。そのまま音声に従い深呼吸などを繰り返すことで、短時間で脳疲労の解消を図ることもできるとしている。
熊野教授は「多くのユーザーの対処法の選択結果、改善の度合いなどのビッグデータを蓄積することで、いずれは、どのような状態の時に、どのプログラムを実行すればどのような効果が期待できるかといった提案ができるようになるだろう」と指摘。「今回のコロナ禍では(インフォメーションとパンデミックを合わせた)『インフォデミック』という言葉が使われるようになるほど、何が事実なのかが分からない状況に陥り、人々のメンタルヘルスも大きな影響を受けている。その中で、本当に頼りになるのは、自分を知り、自分で感じる力を伸ばすことではないか」との認識を示す。
アプリを開発した池内さんは「今後も科学的な根拠を重要視し、実証実験を通じてユーザーに合ったセルフケアを目指したい。心の痛みを和らげる一助となれば」と話した。