新時代のマネー戦略

FPが伝えたいNISAやiDeCoの落とし穴 「お得」で「便利」の裏返し (3/3ページ)

井上信一
井上信一

その資産運用、「いつ何のために使うためのお金なのか」を明確に

 ところで、資産運用(投資)を行うからには、その目的を明確に持っておくことが大切です。

 運用の目的を定めるとは、つまりは「その運用の成果で何にお金を使うのか」を決めておくことに他なりません。やはり、この運用の目的とゴールの時期を定めて、資金を絶えず循環させるのが大切だと考えます。

▼低金利だから…と漠然と「貯蓄→投資」の非効率性

 中には、低金利だから少しでも効率よく資産を増やしたいという漠然とした希望だけで「貯蓄から投資」に移る方もいます。ですが、相場を自分で決められない以上、もしも運用成果が悪いままだったら、その運用のゴールはいつまでもやってきません。

 さらには、運用成果が良くても欲が働いて絶好の売り時を逃してしまうこともあり得るでしょう。その反面で、日常的に使う旅行や外食等の余暇のためのお金は、クレジットカード払いも含め、いまある低金利の貯蓄を、使いたいと思ったタイミングで臨むまま非効率に取り崩し続けています。それならば、そうしたお金の使い方のためにNISAを利用するのも一考ではないでしょうか。

 かくいう筆者も毎年の旅行費は「NISA」の「個別株式」投資で賄っています。もちろん、運用成果が悪い年もありますが、それでも「NISA」の非課税期間満了時か旅行代金の支払い時までにはきっちり換金し、旅先など予算を下方修正した上で割り切って使うようにしています。

 その年は残念ですが、旅行に行ってしまえば楽しいもの。また翌年に頑張れば良いだけのことです。逆に成果が良かった時は予定以上の予算で旅行もできるので、ストレス少なく運用を日常的に楽しめています。

▼老後の生活費は公的資金等の経常収入で 一時的出費等の財源は資産運用で

 また、老後資金目的で長期資産運用を行っている方は多いでしょう。ですが、老後の「どのような場面でお金を使うのか」までを明確にイメージできている方は意外と少ないと思います。

 老後生活といっても、有料老人ホームに転居するとか自宅を大幅に建替えるとかの場合でない限り、一時的にお金を大きく使う場面はそう滅多にある訳でなく、むしろ毎年の生活や余暇、要介護時等の追加費等を資産形成分から賄う場面が考えられます。ですが、それだと「老後がいつまで続くのか」の答えがない以上、「いくらあれば安心か」の明確な答えが見つかりません。やはりなるべく長く働いて収入を確保しつつ、生きている限り終身で受け取れる公的年金を増やす策が不安を軽減するための一番の行動となります。

 最低限生きていくための日常生活に必要なお金を公的年金による収入で賄えれば、老後の不安の大部分は解消できます。しかし、老後とはいえ相当期間は、余暇や自己実現のために日常生活費に上乗せしたお金が必要ですが、自分の生活を潤うための費用は働いて得られる収入で賄えることが理想です。人生100年時代なのだとしたら、無理のない第2第3のキャリアプランも考えるべきでしょう。まずそれをおこなった上で、その補助策としての定期的な収入源、および不測の事態での一時的出費の財源が資産運用による収入となります。

 iDeCoはもちろん、「NISA」でなく「つみたてNISA」を選ぶ方は老後資金形成が目的だと思いますが、こうした点も踏まえ、長きに渡る運用にもうひと手間、面倒とも思えるチェックをするなどの工夫をしたいものですね。

井上信一(いのうえ・しんいち)
井上信一(いのうえ・しんいち) ファイナンシャル・プランナー CFP(R)認定者
価値生活研究室 代表
10年強に渡るFP事業会社等での経験を経て2010年に独立。以来、「誰でもライフプランに基づくキャッシュフローを自分で作れる世の中へ。FPの仕事はその先」をモットーに、企業や労組の福利厚生支援やセミナー・個別相談・情報発信等に従事。主な著書に「保険設計ベスト事例集」(きんざい)等。また、地域の権利擁護事業を通した福祉活動も活発におこなっており、成年後見人としても受任中。

【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら

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