コロナ その時、

(1)2019年12月8日~ 中国・武漢医師の「警鐘」届かず (1/2ページ)

 中国「社会秩序を乱すデマにより、当局は8人を処罰した」 2020/1/1

 日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告が国外逃亡した衝撃もそのままに日本が令和2(2020)年を迎えた1月1日、中国でツイッターとして使われるSNS(交流サイト)の「微博(ウェイボ)」に当局が投稿した一文は権威主義国家ではありふれたものだった。

 「デマは社会秩序を乱す違法行為だ。当局は8人の違法人物を召喚し、法に従って処罰した」

 投稿が重大な意味を持つのは、それが湖北省武漢市の警察当局によるもので、新型コロナウイルスの感染拡大に警鐘を鳴らした8人の処分を宣言していたからだ。中国当局が警告に真摯(しんし)に向き合っていれば、感染者800万人、死者43万人を超えるパンデミックは抑えられたかもしれない、と世界の人々はみている。

 武漢市中心医院の李文亮医師(34)は2019年12月30日、市内の市場で「7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)感染者」が確認されたとのメッセージを受け取り、大学の同級生に転送した。李氏は「違法人物」の一人として、1月3日に当局から呼び出されて訓戒処分を受けた。

 武漢で12月8日に原因不明の肺炎発症例があったことは、後に明らかになった。11月に最初の発症例があったとの報道もある。

 だが、中国当局が世界保健機関(WHO)中国事務所に通知し、27人が原因不明のウイルス性肺炎にかかったと公表したのは「デマ」が流れた翌日の12月31日。台湾は同日、WHOに警告し、武漢発の航空便の検疫を強めたが、中国が「人・人感染」を認めたのは1月20日。武漢の都市封鎖は1月23日までされず、感染は世界に広がった。

 2019年12月8日~2020年1月31日 初感染、政府の危機感薄く

 政府高官「閣僚会議を開くほどじゃない」 2020/1/16〈日本〉

 日本の厚生労働省が武漢での「非定型肺炎の集団発生」に注意喚起をした1月6日、発熱の症状を抱えた30代男性が武漢から日本に到着した。同月16日に国内初の感染が確認された神奈川県在住の中国人だ。しかし、当時の日本政府は国内での蔓延(まんえん)についての危機感をそれほど強く持っていなかった。

 「関係閣僚会議をやるほどではないんじゃない?」

 男性の感染が確認された16日、政府高官はこう語っていた。関心は国内の感染拡大防止より水際対策に力点が置かれていた。

 20日に召集された通常国会の焦点は首相主催の「桜を見る会」だった。

 野党は当初、新型コロナ対策をほとんど取り上げなかった。安倍晋三首相でさえ、20日の施政方針演説で新型コロナに言及せず、7月に控えた東京五輪に触れて「世界中に感動を与える最高の大会とする」と意気込んでいた。

 日本の大手企業トップの間にもきたる東京五輪・パラリンピックの開催を理由に、堅調な景気回復を見通す声が多かった。

 トランプ大統領「完全に制御」 2020/1/22〈米国〉

 新型コロナが経済に影を落とし始めたのは1月半ば以降だ。武漢便を運航する全日本空輸は18日、せきや発熱などの症状がある場合は入国時に検疫官に申し出るよう機内アナウンスを始めた。中国からの訪日客の減少が業績圧迫要因になるとみられた航空や化粧品関連の株価は下落した。

 それでも、日本政府は楽観的な経済シナリオを維持し続けた。日本銀行も歩調を合わせて21日、令和元年度から3年間の実質国内総生産(GDP)の成長率見通しを上方修正した。

 世界の指導者にとっても、新型コロナはまだ中国での出来事だった。

 後に累計200万人以上の感染者、11万人以上の死者を出し、世界最大の被害に襲われることになる米国では、トランプ大統領が1月22日、記者団から新型コロナを懸念していないかと問われ、「完全に制御している」と答えていた。

 日本で「桜を見る会」が焦点になっていたのと同じように、米国ではトランプ氏への弾劾裁判の行方、欧州では31日に迫った英国の欧州連合(EU)離脱に注目が集まっていた。

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