Bizプレミアム

経済低迷でも好況の不動産市場 予想に反し住宅需要・不動産投資が旺盛なワケ (1/4ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない中、中古マンション価格が7カ月連続で上昇するなど首都圏の住宅市場は活況を呈している。コロナ禍で日本経済は低迷。インバウンド(訪日外国人客)需要が消えた宿泊施設や商業施設は苦境に立たされているが、海外の機関投資家などは東京の不動産市場を投資先に選んでいるという。テレワーク(在宅勤務)の普及で落ち込むとみられた都心部のオフィス市場も、「リーマン・ショック」後のような大崩れは免れている。コロナ禍の不動産市場で今、何が起きているのか。

7カ月連続上昇のマンション価格

 「プロも個人も投げ売りを期待していましたが、不動産価格は高止まりしています。値下がりを期待していた人にとっては、その期待が淡いものだったことが明らかになりました」

 不動産市場や金利・為替市場に詳しいニッセイ基礎研究所の准主任研究員の佐久間誠さんは、こう指摘する。最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月以降、不況が深刻化すれば不動産価格は下落し、ローンの返済資金調達などのために物件を投げ売りする個人や事業者が相次ぐとの観測もみられた。しかし、こうした予想に反して住宅の売れ行きは好調に推移。世相を反映し、勉強や仕事に使えるリモート環境の整った共用スペースを備えた大規模マンションも人気のようだ。

 不動産会社などでつくる東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が今月15日に公表した統計によると、2020年12月の中古マンションの成約件数は、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で2533件。3カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、成約価格は5.3%上昇の3739万円となり、7カ月連続で前年同月を上回った。成約件数も東京都区部と多摩は8カ月連続、郊外の横浜市や川崎市、埼玉県では7カ月連続で前年同月を上回っている。

 中古戸建て住宅の成約件数も1092件と前年比で9.3%増加し、6カ月連続で前年同月を上回っている。成約価格は3448万円。こちらは前年比プラス10.7%の2ケタ上昇だ。東日本レインズの担当者は「現場の話を聞きますと、紹介物件が少なくなっているのに購入の需要が旺盛で、単純に需給の関係が価格上昇の要因になっています」と話す。

 人生最大の買い物である住宅。コロナ禍はいまだ先が見通せない状況で、「買い控え」という流れになるかと思えば、さにあらず。大規模な量的金融緩和政策も追い風になっている。

 佐久間さんは「今後も数年間は超緩和的な金融環境が続くとみられ、『コロナバブル』との指摘もあります。東京五輪後にマンション価格が暴落するのではないかとの見方もありましたが、それほど値下がりすることはないとみています。金融環境を左右するのは世界の主要中央銀行の今後の振る舞いですが、小幅な調整はあったとしても、近々に金融政策の正常化に向けた大幅な動きを想定するのは難しいためです」との見解を示す。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus