試乗スケッチ

“アウトバーン”仕様の恐ろしい性能 BMW「M5コンペティション」に脱帽 (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 サーキットで体感した強靭なトルク

 BMW「M5」が性能をさらに研ぎ澄まして誕生した。日本市場に送り込まれたのは昨年の暮れのことだから、正式には2020年モデルということになるのだろうが、ユーザーの手元に本格的にデリバリーされるのは今年である。そんな最新のモデルを富士スピードウェイでテストする機会を得た。しかも、M5の中でもさらに性能を際立たせた「M5コンペティション」である。おそらく日本初であり、あるいは唯一かも知れない。これを報告しないわけにもいくまい。

 M5コンペティションは恐ろしい性能を秘めている。搭載するエンジンはV型8気筒DOHC、排気量は4.4リッターにも及ぶ。ターボチャージャーは贅沢(ぜいたく)に2基組み合わされる。

 最高出力は625ps。6000rpmでピークに達するという化け物である。M5からさらに25psのパワーを嵩(かさ)上げしているというから、それほどのパワーが必要なのかと疑問に感じるほど高みに達しているのだ。

 最大トルクは750Nmというから恐ろしい。その強靭なトルクがわずか1800rpmから溢(あふ)れ出し、しかも5860rpmまでキープされるというのだから、常に戦闘態勢、全域がパワーバンドである。

 実際の加速は、身構えていたとはいえ、ちょっと怖いほどの感覚に襲われる。アイドリングでユルユルしている時点ですでに、トルクが爆発する前兆を感じる。そこからフルスロットルなど見舞うものなら、首がベッドレストに叩きつけられる。体調が優れていなければ、吐き気さえするのだ。

 富士スピードウェイの直線は長い。とはいえ、最終コーナーはタイトであり、低速からの立ち上がりとなる。それでもストレートエンドで速度計の針を確認すると、軽々と270km/hを指しているのだ。これはもう、レーシングカーの世界である。

 トランスミッションは8速ティプトロニックであり、次々とシフトアップが急かされる。本来ならしばらく時間がかかるはずのストレートを、あっという間に走り切ってしまうのだ。

 それでいて特に驚かされたのは、ブレーキングである。2020年モデルでは、ブレーキには電子的な細工がなされており、初期の踏み込みからマックスの減速Gが発揮されるのだ。軽はずみに踏み込むと、首がガクンと前倒しになる。加速でヘッドレストに叩きつけられ、減速で前のめりになるのだから、これはもう暴力と言っていい。

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