試乗スケッチ

観音開きドアが織りなす“引き算の美学” 個性を主張するマツダ「MX-30」 (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 アイデアの勝利

 マツダのSUV「MX-30」が話題を集めているという。昨年の暮れにデビュー、「2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー」では、特別賞である「デザイン・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。観音開きという、マツダが得意とする手法が個性の源だが、決してトリッキーなだけが魅力ではなく、個性的な出で立ちと誠実な作り込みが評価されているようなのだ。

 観音開きとは、観音菩薩像を拝むが如き、両開きの扉の一種である。左右の蝶番で支持された扉が、中央から大きく開く。それをクルマのドアに応用したのが、MX-30の観音開きドアなのだ。

 最大のメリットは大きな開口部であろう。一般的なドアでは、大きく開いたとしてもドア1枚分の開口部しかないが、観音開きであれば、2枚分の広さが稼げる。実際には、ドアヒンジの構造上、ドアを取り払ったかのように開くことはないが、それでも一般的なドアよりも乗り降りがしやすい。

 実はその特性を利用したスポーツカー「RX-8」をマツダは過去にデビューさせていた。ロータリーエンジンを搭載する4ドアクーペがそれだ。比較的全長が短いことから、4人分のドアスペースはない。かといって、2ドアの4人乗りにはしたくなかった。そこで観音開きを採用したのだ。

 前席のドアは一般的なサイズにした。だが、後席用のドアは、その約半分にも満たない開口部だが、前席のドアを開けての0.5枚分だから、つまり、後席の乗員は1.5枚分の開口部から乗り降りが可能になったのだ。アイデアの勝利である。

 米国サターンは1999年に、同様の観音開きの4シーターのスポーツカーをデビューさせた。狙いは共通している。

 もともと観音開きは、高級セダンに採用される技術だった。1955年にデビューしたトヨタの初代「クラウン」がそれで、VIPが乗降しやすいように開口部を広げたのだ。のちにそれは、4シータークロスオーバーピックアップのトヨタ「bBオープンデッキ」や、ホンダ「エレメント」が採用。最近では、「ミニ クラブマン」のリアハッチは観音開きである。コンパクトなボディで余裕のある開口部を求めようとすると、観音開きにしたくなる。

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