新時代のマネー戦略

親の入院・介護は子どもの生活を狂わせる 「40」を覚悟と準備開始の歳にする (2/3ページ)

岡本典子
岡本典子

 「家族が自宅で介護に当たる」か、「介護施設にお願いする」か、家族皆で十分な話し合いが必要です。兄弟姉妹がいる場合は、万が一の場合、だれが介護に当たるか、もしくは協力して介護に当たるか、介護施設に入居するかなどを、事前に話し合っておくことが大切です。土壇場で兄弟姉妹の意見が合わず揉めるケースがありますが、親御さんは心が痛みます。親御さんが安心して暮らせるために、元気なうちから基本ラインの合意を得ておきましょう。

「親の退院は介護のはじまり」と覚悟する

 では、親が急に病気が悪化し入院、もしくは、じわじわと要介護度が上がり転倒し、大腿骨を骨折して「急性期病院」に入院したケースを考えてみます。速やかに適切な治療を受け、状態が安定すると退院となります。しかし、高齢期になると、退院はできても身体機能が失われ、退院後すぐさま日常生活への復帰は難しいケースが見られます。そのような場合は「回復期リハビリテーション病院」に転院し、決められた期間リハビリを受けることができます。大腿骨骨折の場合は発症後1か月以内に転院し、最長90日間。脳血管疾患では発症後2か月以内に転院、最長リハビリ期間180日間です。

 また、退院しても日常生活復帰には不安が残るという場合は、在宅復帰支援を行う「地域包括ケア病棟」へ転院することもできます。最長入院期間は60日間です。

 このように、これまで元気だった親御さんが、脳梗塞などの病気や転倒・骨折で入院し、退院と同時に介護が必要になる、つまり「親の退院は介護のはじまり」というケースがよく見られます。加齢とともにその確率は上がりますので、慌てないで済むよう覚悟はしておくことが大切です。

 下の図は、急性期病院を退院後の主な選択肢をまとめたものです。退院したら自宅に戻るのが基本ですが、回復期リハビリテーション病院や地域包括ケア病棟で、リハビリや在宅復帰への支援を経て自宅に戻る、もしくは有料老人ホームや介護老人保健施設(老健)へ住み替えるという選択肢もあります。

医療・介護費用が高くなった時に使える制度は必ず押さえておく

 高齢期になり、医療費や介護費用が高くなった時に軽減される制度がありますので、押さえておきましょう。

【高額療養費制度】

 入院すると高額な医療費がかかります。外来診療でも慢性疾患で長期の通院が必要になる場合があります。さらに、複数の疾患を併発すると医療機関のはしごとなるなど、とかく医療費がかさみがちです。医療費の負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う1か月の医療費が、各人の自己負担限度額を超えた場合、その超過額が支給される制度が「高額療養費制度」です。自己負担限度額は、70歳未満か70歳以上かで異なり、また所得によっても異なります。なお、入院中の食事代や差額ベッド代、先進医療費などは対象外です。

 高額療養費制度の利用に際し、「限度額適用認定証」があると、自己負担限度額分の支払いだけで済み、払い戻しの手間がかからず便利です。70歳未満、70歳以上、75歳以上(後期高齢者医療制度に移行)で、また、一部所得によっても要・不要が異なります。必要な人の場合は、事前に各保険組合に申請して限度額適用認定証を取得し、医療機関の窓口に提出しておきます。

 親御さんのケースの自己負担限度額や限度額適用認定証が必要かなども、確認しておくとよいでしょう。

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