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作って楽しい、もらっても… エコでもある「おかんアート」の世界 (2/2ページ)

 山下さんは「これはなんだと気になり始めていたら、新聞で『おかんアート』が取り上げられていた。インターネットの掲示板で、愛情を込めながらおちょくられている作品ということだった」

 興味を持った2人は、紹介を受けて多数のおかんアーティストを発掘し、2年後にはおかんアート展を初開催。以降、毎年1回開かれる恒例のイベントとなった。昨年は約50人が出品し、作品の販売も行って売り上げも重ねている。

 あげたい、教えたい

 「皆さん、センスがいいとか、手芸が得意だからとかにこだわらず、作りたいから作っているんですよ」という伊藤さん。展示会を通じて、おかんたちは自分の技術を試し、それを披露することを楽しんでいる。

 近しい人で贈りあうこともある。伊藤さんは「おかんたちも、プレゼントを迷惑と思う人がいるのもわかってはいるけれど、『あげたい、教えたい』という気持ちが強いんです」とその心理を教えてくれた。

 おかんアートで多く見られる不用品の再利用は、環境問題など地球規模の課題の解決を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の先取りなのではないか。現代アートの文脈で評価されるなど、実は最先端を歩んでいる芸術なのではないか。こんな質問を新居さんと藤岡さんにしてみた。

 すると2人は「そんなこと考えたこともない」とにっこり。おかんアートはあくまでゆるく、味わいのあるものだった。

 実はアートとしても…

 実は、おかんアートは昨年8月、京都市で開かれた現代アート作品とのコラボ展「おかんアートと現代アートをいっしょに展示する企画展」で、美術界デビューを果たしている。京都市立芸術大学非常勤講師で美術作家「フジタマ」として活動する東正子さんが企画し、同大学などが主催する大きいイベントだった。

 フジタマさんは、亡くなった母親が手芸作品をつくったり、もらったりするたちで、実家の整理で大量のおかんアートと向き合った。

 それを眺め「どないしよか」とオロオロしているとき、「下町レトロに首っ丈の会」と出合った。そこでまた多くの作品やおかんアーティストを知るにつれ、「置き場所と添える文脈を変えれば現代アートそのものではないか」と思い至ったという。

 フジタマさんによると、現代アートは、一般的な美意識や価値観とのズレをあえて見せる、意図的に示すことで、新たな価値を鑑賞者に提示する役割がある。

 一方で、おかんアートは一般的な美意識や価値観とずれている点では現代アートと共通点はあるものの、特に新たな価値や美意識を与えようとはまったく意図されていない。しかし、「見る人によってはそのありさまがすでに現代アート的だ」。フジタマさんはこう強調している。

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