強調されたワンペダル感覚
パワー感覚に不足はない。モーターの特性上、低回転から力強く、ハイウエェイの合流も優位にこなす。都会型SUVであるMX-30らしい走り味なのだ。
実に興味深いのは、「エレクトリック G-ベクタリング コントロール プラス」(e-GVCプラス)と呼ばれる少々長い名称の機構である。G-ベクタリングは従来からの機構であり、自動でエンジン出力を絞ることで、旋回時の素直なハンドリングや安定性を担保する。その機能をEVで再現したもの。電気モーターは内燃機関より素早く確実な反応を示すから、G-ベクタリングコントロールの制御がより緻密になる。完成度が高まったのだ。
モーターペダルと呼ばれる、いわばワンペダル寄りの機能も装備される。つまり、アクセルオンが加速であるのは従来通りだが、アクセルオフでは惰性で流れるのではなく、強めの回生ブレーキが発生するのである。ブレーキペダルを踏む頻度が少ない。右足首の動きだけで加減速をコントロールしやすいことからワンペダル感覚と呼ばれるそれが強調されたのである。
ワンペダルの是非に関しては侃々諤々(かんかんがくがく)の議論がなされているのだが、マツダも日産が好んで採用するワンペダルに舵を切ったのが興味深い。
ことほどさように、マツダMX-30EVモデルは、本気の開発姿勢が窺(うかが)える。内燃機関を徹底的に磨き込む一方で、真剣にEVを開発していたことが想像できた。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。