電気系モデルでは得られぬ魅力
ハイブリッドとの対峙という点では燃費性能が気になるところだが、ツインターボで510psものパワーを誇るのに、オンボードコンピューターの数字は「平均燃費12.0km/L」を指していた。市街地から高速道路、そしてワインディングでのアップテンポな走りを含めての数値であることを思えば、十分に経済的で環境に優しい。その点でも、内燃機関の可能性を感じさせたのである。
たとえばエンジンサウンドの調律が行き届いており、爆音と呼べるほどの音量ではない。音質は低く、深夜の帰宅も気にならない程度に抑えられている。だがひとたびアクセルを踏み込めば、コックピットには心地よいビートが響く。騒音を抑えながらも、内燃機関ならではの快感を提供するのだ。電気系モデルには絶対に得られない魅力を突きつけているようである。
とはいうものの、M4の本来の味わい方はもちろん熱い走り味にある。ボディは堅牢であり、締め上げられた足回りが組み合わされるのは想像の通りだ。ステアリング応答性は研ぎ澄まされており、高速域でも爽快なコーナーリング姿勢を披露する点も期待通りである。
しかも、M4には今回の試乗車とした「M4コンペティション」グレードとは別に、より高性能のカーボンブレーキ装着車「M4コンペティション ・トラックパッケージ」や、6速マニュアルミッション(MT)を組み合わせた「M4」も用意されているのだ。M4コンペティションは、8速ATが組み合わされているのに対しての6速MTの設定である。AT比率が1%ほどの日本では、ほぼユーザーが限定されている3ペダルまで用意されているのである。それこそ、電気モデルには得られない仕様なのだ。
新型M4は、押し寄せる電気自動車(EV)時代への反抗のようにも思える。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。