試乗スケッチ

内燃機関の可能性を証明したBMW「M4」 HV・EVに抗うかのような武闘派 (2/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 電気系モデルでは得られぬ魅力

 ハイブリッドとの対峙という点では燃費性能が気になるところだが、ツインターボで510psものパワーを誇るのに、オンボードコンピューターの数字は「平均燃費12.0km/L」を指していた。市街地から高速道路、そしてワインディングでのアップテンポな走りを含めての数値であることを思えば、十分に経済的で環境に優しい。その点でも、内燃機関の可能性を感じさせたのである。

 たとえばエンジンサウンドの調律が行き届いており、爆音と呼べるほどの音量ではない。音質は低く、深夜の帰宅も気にならない程度に抑えられている。だがひとたびアクセルを踏み込めば、コックピットには心地よいビートが響く。騒音を抑えながらも、内燃機関ならではの快感を提供するのだ。電気系モデルには絶対に得られない魅力を突きつけているようである。

 とはいうものの、M4の本来の味わい方はもちろん熱い走り味にある。ボディは堅牢であり、締め上げられた足回りが組み合わされるのは想像の通りだ。ステアリング応答性は研ぎ澄まされており、高速域でも爽快なコーナーリング姿勢を披露する点も期待通りである。

 しかも、M4には今回の試乗車とした「M4コンペティション」グレードとは別に、より高性能のカーボンブレーキ装着車「M4コンペティション ・トラックパッケージ」や、6速マニュアルミッション(MT)を組み合わせた「M4」も用意されているのだ。M4コンペティションは、8速ATが組み合わされているのに対しての6速MTの設定である。AT比率が1%ほどの日本では、ほぼユーザーが限定されている3ペダルまで用意されているのである。それこそ、電気モデルには得られない仕様なのだ。

 新型M4は、押し寄せる電気自動車(EV)時代への反抗のようにも思える。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。

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