5時から作家塾

初心者向けのミシンが、いま注目を集めるワケ (2/2ページ)

吉田由紀子
吉田由紀子

 「市場の縮小に伴い、当社も売り上げが落ちていきました。なんとか復活させたいと、ミシンが売れない理由を調べ、インタビューも行いました。その結果わかったのが、小学校の家庭科の授業が原因になっていたことです。確かに従来のミシンは重い上に使いにくい構造になっています。針に糸を通すだけでも小学生には一苦労でしょう。ならば、子どもがもっと楽しめるミシンを作ればいいのでは? と思いたったのです」

 3年間、試行錯誤を重ねた結果、子ども向けのミシンを開発する。それが2015年に発売した「毛糸ミシンHug」。糸を使わずに、なんと毛糸で布地を縫うという画期的なミシンである。

 「おもちゃに手を出すなんて、と父(当時の社長)は猛反対でした。このミシンは従来の流通ルートではなく、おもちゃ業界へ売り込んだところ反響が大きく、2カ月で2万台も売れて品切れになったのです。プレゼントとしてお子さんに贈る方が多かったため、当時のクリスマス時期には、一瞬で完売するほどのご注文をいただきました。当社は2015年には赤字でしたが、このミシンのおかげで翌年、黒字に転換することができました」

 子どもに楽しんでもらうことを第一に考えた「毛糸ミシンHug」。布だけでなく、紙やフェルト、毛糸も縫えるようになっている。針から指を守るガードがついているため、小さな子どもでも安心して使える。同社では、このミシンを使った作品コンテストも実施しており、子ども世代へのミシンの普及に力を注いでいる。こちらも2016年、一般社団法人日本ホビー協会が主催する第16回ホビー産業大賞で経済産業大臣賞を受賞している。

 「お子さんがミシンを使うことで、お母さんやおばあちゃんとの会話が増えた。こういった声をたくさんいただいています。親御さんが若い頃は、一家に一台あったミシンがあった時代。ミシンを囲んで家族がなごやかに交流していたと思います。おばあちゃんはお孫さんに教えたい。お孫さんも教わりたい。このミシンを通してそんな交流が生まれているのではないでしょうか」

 ちなみに同社には「孫につくる、わたしにやさしいミシン」という機種も用意されている。針の部分を拡大できるルーペがついており、高齢者が使いやすい工夫が凝らされており、こちらもヒット商品になっている。

 かつては一家に一台あったミシンは、親と子をつなぐ道具でもあった。戦後、ミシンの需要は飛躍的に増えたが、次第に家庭で縫い物をする習慣が廃れ、ミシンの需要も減ってしまう。アックスヤマザキは、いま一度原点に立ち返り、ミシンを通したあたたかい交流を生み出そうとがんばっている。(吉田由紀子/5時から作家塾(R)

5時から作家塾(R)
5時から作家塾(R) 編集ディレクター&ライター集団
1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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