受験指導の現場から

成績だけでなく所得にも格差? 「早生まれは不利」は事実か俗説か (2/3ページ)

吉田克己
吉田克己

偏差値にも「遅生まれ・早生まれ」問題

 話を最初の論文「誕生日と学業成績・最終学歴」に戻す。その中に1点、筆者が引っ掛かった点がある。それは、以下の記述である。

「この早生まれと遅生まれの間の学力差は,国私立中学校への在学確率にも大きな影響を与える。4月生まれの国私立中学校在学比率は日本全国で7%であるにもかかわらず3月生まれの数字は4%である」

 4月生まれが7%で3月生まれが4%なら、残りの10ヵ月の単純平均(89%÷10ヵ月)は8.9%ということになる。おかしくないか? と。

 そこで、今年中学受験をした年齢の前後について、生まれ月別の割合を調べてみた(生まれ月別の割合はここ何十年もほとんど変化していないことが知られている)。それが、次の表(*3)である。

 この表には4月1日生まれを早生まれにするという処理が抜けているが、4月の7%というのは、じつは生まれ月別の人口比よりもむしろ低いことが分かる。逆に3月生まれは、総数では4月生まれとほとんど変わらないにもかかわらず、国私立中学校在学比率(4%)では対人口比にして約半分にまで下がっていることになる。つまり、「遅生まれが有利というわけではなく、3月生まれが他の多くの生まれ月に席を奪われている」と解釈すべきである。

 実際、冒頭の論文を発表した川口大司・現東京大学大学院経済学研究科教授が、国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS、2003年)の結果について分析したところ、平均偏差値でも相対年齢効果が確認できたという。

 TIMSSの結果について、日本の中学2年生(約9500人)と小学4年生(約5000人)の数学と理科の平均偏差値を生まれ月ごとに算出し、グラフ化したものによれば、4~9月生まれ、10~12月(または1月)生まれ、1(または2)~3月生まれの3グループに大別され、偏差値が最も高い生まれ月と最も低い生まれ月との差は、小学4年生では3.5程度、中学2年生では3程度となっている。

早生まれの所得は「4%低い」

 以上の内容を追認する研究結果も出されている。山口慎太郎・東京大学大学院経済学研究科教授が2020年7月に発表した調査研究によると、早生まれの不利は、高校入試の段階でも続いていることが分かったという。統計的な誤差を補正した上で、4月生まれと3月生まれで入学した高校の偏差値を比べたところ、「4.5も違っていた」とのことである。

 さらには驚くなかれ、山口教授は「早生まれの不利は大人になっても消えない」と断言。30~34歳の所得を比較した先行研究によると、早生まれのほうが約4%低いという結果が出ているというのである。

 川口教授は論文「誕生日と学業成績・最終学歴」で、小学校低学年のうちに経験した不利さが後々まで影響するならば,それは看過できる問題ではない」との問題を提議し、「相対年齢効果の存在は頑健に確認され,その効果は永続的であり,最終学歴にまで影響を及ぼしている」と結論づけている。そのうえ山口教授も「社会の仕組みそのものが、早生まれの不利を固定化する方向に働いていると考えられる」と指摘している。

早生まれの子どもに親がしてあげられること

 では、2・3月生まれの子どもの親はどうすればよいのだろうか?

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus